雑誌やWebサイトを見ると、いろんな理論株価(目標株価や適正株価とも呼ばれる)があります。理論株価を参考にして投資しているという方は多いです。
以前、みんかぶなどで予想されている理論株価とか目標株価を参考に投資したことがありますが、全然当たりませんでした。理論株価って、本当にあてにしてよいものなのでしょうか?
実は、理論株価にはいろいろな考え方があり、計算のしかたによって、その数値は大きく異なることがあります。そのため、単純にその数値だけを信じて投資するのはおすすめできません。重要なのは理論株価の数値そのものよりも、どうやって求めたかです。
ちゃんと根拠をもって理論株価を活用すれば成功確率は高まると思います。
本記事では、代表的な5つの理論株価を比較した結果と、理論株価に関する私の考え方について紹介します。
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理論株価(目標株価)の比較
実際の株価に対する、各理論株価の乖離率を比較してみました。
理論株価は、以下の5つを選び、2018/6/21の終値に対する乖離率を調べました。
雑誌:
- ダイヤモンド・ザイ(ZAi、2018/6/21発売号)
- 東洋経済(会社四季報プロ500)(2018/6/15発売号)
Webサイト:
比較対象の銘柄は、各業界を代表する15社で、日経平均採用銘柄の中から選んでいます。
理論株価の乖離率を比較した結果
理論株価の乖離率を比較した結果が以下の図です。
縦軸は実際の株価に対する理論株価の乖離率を表しています。プラスの方向に大きいほど実際の株価が理論株価よりも割安、マイナスの方向に大きいほど割高を意味しています。
電気機器P社のように乖離率があまり変わらない、つまり理論株価にあまり差がないものもありますが、その他の銘柄は何十%も差があります。
特に、割高・割安の判断が逆方向に大きく振れてしまっているものは、買うべきか、買わないべきかの判断が逆になってしまいます。
これでは、単におみくじを引いているような状況ですね。。。
参照元によって、当たったり、当たらなかったりするのですから、「理論株価はあてにならない」と思われるのも当然ですね。
こんなに違う!理論株価(適正株価)の計算方法
理論株価が各種Webサイトでばらばらなのは、計算方法の違いにあります。
みんかぶの理論株価の計算式
主に相関度の高い銘柄間での相対分析、及び過去2年間の業績や同一業種分類のPERや配当利回りなど、複数の観点から過去分析をし、現時点での理論的な株価を道きだしています。
みんかぶは株価と各種指標との連動性を重視しています。
理論株価Webの理論株価の計算式
理論株価=資産価値+事業価値
資産価値=BPS×割引率(自己資本比率により割引評価)
事業価値=EPS×ROA×150×財務レバレッジ補正
(中略)
結局、理論株価が何をしているかというと、市場の行き過ぎた評価の補正ですかね。
買われすぎた価値を売られすぎた価値に付け替えて、長期的にみて妥当な範囲に修正します。
理論株価Webは、資産価値と事業価値に分けて計算しています。
ファンダメンタルズ分析の一種と考えてよさそうです。
一方で、みんかぶと理論株価Webの共通点としては、行き過ぎた株価は中心に戻ることを前提として計算しているようです。
だから、上図の乖離率は比較的小さめになっているのですね。
ダイヤモンド・ザイ(ZAi)の理論株価の計算式
理論株価=成長価値+利益価値+資産価値
資産価値:1株あたりの株主資本
利益価値:今期の予想1株益×年数
成長価値:売上高成長率から算出した、各年の1株益成長分の合計引用:最新の「理論株価」でわかった割安株ランキング! 割安度80%で1位のヒト・コミュニケーションズなど 理論株価が割高⇒割安に転換した上位17銘柄を紹介!(ザイ・オンライン)
ダイヤモンド・ザイ(ZAi)は、現在の資産価値と、将来稼ぐ利益(成長価値+利益価値)を合計して計算しています。
東洋経済(会社四季報プロ500)の理論株価の計算式
東洋経済(四季報プロ500)も、現在の資産価値と、将来稼ぐ利益を合計して計算しています。
ダイヤモンド・ザイと似ていますが、将来利益の予想の仕方が違います。
東洋経済は3期平均ROEを用いるので、異常値の出る数は比較的少ないと考えられます。
GMOクリック証券の理論株価の計算式
「企業価値」とは、財産価値(どのくらい資産を持っているのか)と、事業価値(これからどのくらい収益を上げられるのか)を合算したものをいいます。
事業価値は企業が将来的に生み出す各年のフリーキャッシュフロー全てを、現在価値に割引いて合計したものです。
この企業価値は株主だけのものではなく、株主以外にも銀行の出資分である有利子負債(借金)を差し引いたものが、投資家が得る株主価値となり、それぞれ下記の計算式で表します。
企業価値 = 事業価値 + 財産価値
株主価値 = 企業価値 - 有利子負債
GMOクリック証券は、財務諸表から事業価値と財産価値、有利子負債を用いて計算しています。
大きな意味での考え方は、ダイヤモンド・ザイや東洋経済に似ていますが、資産価値、事業価値の計算方法が違います。
また、ダイヤモンド・ザイと東洋経済、GMOクリック証券の計算方法は、現在の株価自体に左右されない方法なので、みんかぶと理論株価Webに比べて、乖離率が比較的大きめに出ています。
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以上のように、5方式には大きな違いがあることがわかります。
これらの計算方法の違いによって、理論株価がばらついています。
理論株価(適正株価)の計算式と使い方の注意点。おすすめは企業価値評価手法
正しい理論株価は存在するのか?
理論株価が参照元によって、これだけ違うと、どれを信じてよいのかわからなくなりますね。
では、そもそも正しい理論株価というのは存在するのでしょうか?
私の考えですが、残念ながら、絶対的に正しい理論株価というものはないと思います。
その理由は、2つあります。
不確実な将来について、投資家の推測が入らざるを得ないから
理論株価とは、企業価値を表すものと考えた場合(ダイヤモンド・ザイや東洋経済、GMOクリック証券の考え方です)、現在保有する資産価値と、将来稼ぐであろう利益の合計で算出されるはずですが、これらを正確に計算することは困難です。
なぜならば、保有する資産の情報は、部分的にしか公開されていないうえ、実際に売ってみなければ正確な金額はわかりません。
また、将来の事業環境については、消費者の好みが変わってしまったとか、天候や為替などの条件が悪かったとか、時には突発的な事故や大地震などで大きく変わってしまいます。
投資家は限られた情報の中で分析しなくてはいけないため、理論株価の算出には、投資家の推測が入らざるをえないのです。
需給で決まる株価は、企業の本来の価値からかけ離れることがあるから
さらに、理論株価の算出に、需給要因も含めた場合(はっしゃんやみんかぶの考え方です)、世界中の投資家の頭の中を予想しなければいけません。
PERやPBR、配当利回りといった投資指標が手掛かりとなりますが、投資家同士の裏の読みあいもありますので、思っていた通りになることは多くありません。
合理的に算出した理論株価を使って長期のスタンスで投資するなら、成功確率は高まる
結局、理論株価は多くの推測にもとづいて算出しなければいけないので、その推測方法によって千差万別となり、どれが正しいとは言えないのです。
では、そもそも理論株価を考えることは無意味なのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
不確かであっても、ちゃんと根拠をもって算出した理論株価であれば、株式投資の成功確率を高めることができます。
(もちろん、百発百中は無理ですが。。。)
そもそも成功している投資家は何らかの根拠をもって、割安、割高を判断しています。理論株価算出の根拠を理解したうえで上手に活用すれば、株式投資における成功確率は高まると考えています。
私がおすすめする理論株価の考え方:企業価値評価手法
私の場合、理論株価とは企業の経済的価値を金額で表したものだと考えています(ダイヤモンド・ザイや東洋経済、GMOクリック証券と似た考え方です)。
この考え方の場合、需給による変動は完全に無視しますので、短期的な動きを予測することには適していません。
しかし、投資の神様といわれるウォーレン・バフェットの師匠で、バリュー投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムは次のように言っています。
短期的にみると、株式市場は人気投票装置である。しかし、長期的にみれば、価値計測装置である。
つまり、短期的な株価は需給次第だが、長期的な株価は企業価値で決まるということです。
※企業価値を1株あたりに換算したものが理論株価です。つまり、長期的な株価は理論株価で決まります。
株価の割安度を合理的に診断したいなら、企業価値評価手法を理解しておくことをおすすめします。
企業価値評価手法で理論株価を計算するには財務分析が必要
企業価値評価手法で理論株価を求めるには財務諸表を読み解く必要があります。
なぜなら、企業価値というのは、企業の財務内容(価値のある資産がどれだけあるか、負債の額はどれだけあるかなど)と業績(将来稼ぐであろう利益はどのくらいか)から計算されるからです。
企業価値評価手法における理論株価の考え方と計算方法については、以下の記事にまとめましたので、詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
理論株価(適正株価)の計算式と使い方の注意点。おすすめは企業価値評価手法
手軽に理論株価を活用するならGMOクリック証券の財務分析ツールがおすすめ
企業価値評価手法は財務諸表を読み解かないといけないので、ある程度の手間がかかります。
もっと手軽に企業価値評価手法による理論株価を知りたいなら、GMOクリック証券が無料で提供している財務分析ツールがおすすめです(口座保有者のみ閲覧可能)。
企業価値評価手法の具体的な計算方法はいろいろありますので、GMOクリック証券のやり方が絶対的に正しいというわけではありません。しかし、基本的な考え方は同じなので、おおむね似た結果になります。理論株価を簡単に調べられて便利なので、私も参考値として使っています。
スマホでも簡単に申込・取引できます
まとめ
本記事では、代表的な5つの理論株価を比較した結果と、理論株価に関する私の考え方について紹介しました。
理論株価はいろいろな計算方法がありますし、その結果はバラバラです。結果だけを信じて投資すると大失敗することがありますので注意が必要です。
大事なのは理論株価の根拠を理解して、どこに価値がある(強みがある)銘柄なのかがわかるようにすることです。
やり方は人によってさまざまですが、自分にとって納得できる方法を探すとよいです。私の場合は、上述の企業価値評価手法が最も理論的で納得感があると感じていますので、以下の記事も参考にしてもらえるとうれしいです。