【書評】『完全なる投資家の頭の中』。バフェット、マンガーの投資哲学と判断基準

この記事はこんな人に役立ちます。

  • 「バークシャー・ハサウェイの投資の判断基準を知りたい」
  • 「バフェットのような割安株(バリュー株)投資をしたい」
チャーリー・マンガーはウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイの副会長です。マンガーも優れた割安株(バリュー株)投資家であり、バフェットの長年のパートナーです。

本書『完全なる投資家の頭の中』は主にマンガーの言葉をもとにして、その投資方針や投資哲学を解説しています。本書を読めば、マンガーやバフェットがお手本としているグレアム式バリュー投資の考え方や、忍耐強く割安になるのを待つべきという投資哲学などが一通りわかります

本書には残念ながら、具体的な投資指標などの話はあまりありません。しかし、本書を読んで考え方を学んだのち、『億万長者をめざす バフェットの銘柄選択術』などを読めば、バフェットやマンガーの投資基準を理解しやすいです。

本記事では『完全なる投資家の頭の中』の内容を簡単にまとめ、私が感じたことについて紹介します。

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『完全なる投資家の頭の中』の著者・訳者情報

最初に、『完全なる投資家の頭の中』の著者、訳者を紹介します。

著者:トレン・グリフィン

マイクロソフト勤務で、前職は未公開株式投資会社のイーグルリバーのパートナー。イーグルリバーでたくさんのベンチャー企業などに投資していたほか、ビジネスコンサルタントとして韓国とオーストラリアで5年間働いた経験があります。

著作に『ザ・グローバル・ネゴシエーター』、『コリア ―― ザ・タイガー・エコノミー』などがあります。

監修:長尾慎太郎

東京大学工学部、北陸先端科学技術大学院大学・修士卒。日米の銀行、投資顧問会社、ヘッジファンド、大手運用会社などに勤務。

彼が監修した書籍として、『バフェットからの手紙 』『インデックス投資は勝者のゲーム』なども有名です。

訳者:井田京子

翻訳者。主な訳書に、『バフェットからの手紙 』、『株式投資で普通でない利益を得る』などがあります。

『完全なる投資家の頭の中』の概要

本書では、以下の内容について述べています。

  1. グレアム式バリュー投資の基礎
  2. グレアム式バリュー投資システムの原則
  3. 智慧
  4. 間違いを犯す心理
  5. 必要不可欠な資質
  6. グレアム式バリュー投資システムの8つの変数
  7. 会社経営において必要不可欠な資質

それぞれの項目について、マンガー(一部、バフェットやその他のバリュー投資家)の言葉を紹介し、その意味を著者のトレン・グリフィンが解説するという構成になっています。

本書の主な内容は、グレアム式バリュー投資の考え方

ベンジャミン・グレアムは、バフェットの師匠として有名な割安株(バリュー株)投資家です。今でもバリュー投資家の多くがグレアムの考え方を基礎としています。

バフェットやマンガーの投資方針は、時代の変化や投資金額の巨額化によってグレアムの考え方から少し変化したといわれます。しかし、それでもバフェットやマンガーの思考は一貫してグレアム式バリュー投資を基礎としており、その有効性は薄れていません

本書ではグレアム式バリュー投資家の基礎、および原則的な考え方と、8つの変数(投資判断する際に決めなくてはいけないポイント)についてまとめられています。バリュー株投資に興味がある方にとって、学ぶことが多い内容です。

マンガーの知性は銘柄選定だけでなく、人間心理などを含めた総合力にある

さらに、本書の内容はバリュー投資の考え方だけにとどまりません。マンガーは、投資で大事なのは幅広い智慧(教養)と考えていて、以下のように言っています。

知識は、幅広い分野の大きなアイデアを、その一部ではなく、全部を繰り返し使って考えていかなければなりません。ほとんどの人は一つのモデル(例えば、経済学)で訓練されているため、そのなかですべての問題を解決しようとします。古いことわざにもあるように、「金槌しか持っていない人には、すべての問題が釘に見える」という状態です。しかし、これは問題の賢い対処方法とは言えません。

―― チャーリー・マンガー(2000年のウェスコ株主総会)

実際、投資判断をするには財務分析などの定量的な判断だけでなく、ビジネスモデルや競争力の強さなどの定性的な判断が必要です。さらに、不安や焦りなどの人間心理に惑わされて理性的な判断ができなくなることを避ける必要があります。

つまり、バフェットやマンガーのように長年投資の世界で成功し続けるには、多面的な投資判断が大事なのです。

マンガーが大事にしている投資哲学や、人間が間違いを犯すときの心理については、本書の第3~4章で詳しく述べられています。本書を読むと、マンガーの教養の深さを感じます。

『完全なる投資家の頭の中』を読んで学んだこと

私が本書を読んで学んだことは以下の2つです。

  • グレアム式バリュー投資家は忍耐強くなければいけない
  • 自分がわかるもののみに投資する

以下で詳しく解説します。

グレアム式バリュー投資家は忍耐強くなければいけない

私が1つ目に大事だと感じたのは、グレアム式の割安株(バリュー株)投資家はどんな時も忍耐強くなければいけないことです。

マンガーは、以下のように言っています。

私たちは衝動に駆られてバットを振ることはありません。チャンスが来るまでずっと待つつもりです。時期によっては、投資先を探す時間があきれるほどあります。

――チャーリー・マンガー(2001年のバークシャー株主総会)

忍耐強く待つと言うのは簡単ですが、実際にやるのは大変です。なぜなら、待つ時間は数年に及ぶこともあるうえ、いつまで待てばよいかは事前にわからないからです。

例えば、2017~2018年は大手IT企業などの成長株(グロース株)優位の状況が続いており、割安株(バリュー株)のパフォーマンスは良くなかったです。このようなとき、バリュー投資家は成長株の株価がぐんぐん伸びるのを指をくわえて見ているしかありません。

報われない状況が何年も続くと、自身の投資法に対する信念が揺らぎそうになります。しかし、それでもマンガーは「衝動に駆られずに、チャンスが来るまで待つべき」だと言っています。

実際、バークシャーはITバブルの時代に批判を受けながらも、忍耐強く待ち続けた

実際、バークシャーはITバブルの時代に、チャンスが来るまでずっと待ちつづけたことで有名です。

2000年前後に起きたITバブルでは、短期間で資産を何倍にも増やす投資家が多くいました。しかし、バフェットとマンガーが率いるバークシャーは「自分たちが理解できないIT株には手を出さない」という姿勢を貫きました。

その結果、バークシャーの運用成績はインデックス(平均株価)を下回る時期が続き、「バフェットの時代は終わった」とも言われました。

しかし、その後、実態が伴わない株価上昇は続かず、ITバブルは崩壊しました。多くの投資家が大損失を被った中、IT株に投資していなかったバークシャーは大きな損失を受けることはありませんでした

バフェットやマンガーがITバブルに踊らず、批判を受けながらも、忍耐強く待ち続けた結果の成功です。グレアム式バリュー投資家に必要とされる辛抱強さを感じます。

グレアム式バリュー投資における、買いのタイミング

では、いつまで忍耐強く待たなければいけないのでしょうか?マンガーは以下のように言っています。

私たちは、何十年にもわたって気に入った株が下がれば買い足してきました。もちろん、何かが起こって自分が間違っていたことに気づけば、売ります。しかし、判断が正しいと自信が持てれば、割安な時を利用して買い増していきます。

―― チャーリー・マンガー(2002年のウェスコ株主総会)

つまり、投資対象の銘柄の株価が十分な安全域をもって割安であると判断したときに投資すべきだということです。全体的な過熱感などで買いのタイミングを判断するわけではありません。
※安全域というのは企業の本質的価値(企業価値)と市場価格の差のこと

本書は常に合理的に判断するというマンガーの考え方がよくわかります。

バリュー投資における企業の本質的価値(企業価値)の考え方について、その一例をこちらの記事にまとめましたので、興味があればこちらもどうぞ。
初心者におすすめな割安株の見つけ方(スクリーニングによる探し方)と注意点

自分がわかるもののみに投資する

私がもう一つ学んだのは、自分がわかるもののみに投資するということです。

マンガーは以下のように言っています。

ウォーレンと私が持っているスキルは、簡単に教えることができます。ひとつは自分の能力の優位性を知っていることです。もしその優位性がわからなければ、それは能力とは言えません。また、ウォーレンも私もよくある愚行を退けるのが得意です。私たちは、標準的な間違いを懸命に排除してきただけで、たくさんの有能な人たちや勤勉な人たちの先を行くことができています。

―― チャーリー・マンガー(2009年のスタンフォード・ローヤー誌)

マンガーとバフェットが長年投資で成功し続けられたのは、自分のコアコンピタンス(中核となる強み)領域に集中していたからです。

理解できない会社は「難しすぎる」の箱に入れる

さらに、マンガーは以下のように言っています。

私たちは、会社の正しい価値を推測するためのシステムを持っていません。そのため、ほとんどの会社は「難しすぎる」の箱に入れて、もっと簡単な会社に目を向けます。

―― チャーリー・マンガー(2007年のバークシャー株主総会)

優良さや株価の割安さで魅力を感じる会社があっても、自分ではそのビジネスモデルの価値を理解できない場合はよくあります。

このようなとき、むげに却下することができず、「せっかくチャンスを見つけたのだから」と焦って投資してしまうことが私もありました。しかし、このように中途半端な理解で投資した場合、失敗することが多かったです。

マンガーのように「難しすぎるから判断できない」と保留すれば、冷静に立ち止まることができます。判断が難しい投資先を避けて、もっと簡単な投資先が出るのを待つことは大事だと感じました。

まとめ

本記事では『完全なる投資家の頭の中』の内容を簡単にまとめ、私が感じたことについて紹介しました。

本書はマンガーやバフェットが基礎としているグレアム式バリュー投資の考え方や、マンガーの投資哲学について学ぶことができます。

グレアム式バリュー投資は常に良い成績を出せるというわけではなく、時期によっては他の投資法に劣る場合もあります。しかし、長い目でみればマンガーやバフェットは市場平均を大きく上回る実績を出していることは事実です。

本書はどんな時も信念に基づいて合理的に行動していくことの大切さと、周りに流されない勇気を与えてくれる一冊です。

マンガーやバフェットらの投資法を理解し、バリュー投資を実践したいという方は、『完全なる投資家の頭の中』を読んでみるとよいです。

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