【書評】『バフェットからの手紙』。割安株投資の考え方と銘柄選択方法の奥深さを学ぶ

バフェットからの手紙 投資本
この記事はこんな人に役立ちます。

  • 「バフェットの投資の判断基準を知りたい」
  • 「バフェットのような割安株(バリュー株)投資をしたい」
投資の神様とも呼ばれる、ウォーレン・バフェットに憧れているという個人投資家は多いです(私もその一人です)。そんな方におすすめな書籍が、『バフェットからの手紙 (第4版)』です。

本書はバークシャー・ハサウェイ社の年次報告書に掲載されている、「会長(バフェット)からの手紙」をまとめたものです。

本書はボリュームが多いうえ、過去の時代を前提とした内容も一部含まれているため、難解な部分も多いです。しかし、バフェットの長年の投資経験による深い洞察が豊富に含まれており、投資の考え方や銘柄の判断基準など、学ぶことが多いです。

本記事では『バフェットからの手紙 (第4版)』の内容を簡単にまとめ、私が感じたことについて紹介します。

『バフェットからの手紙』の著者・訳者情報

最初に、『バフェットからの手紙 (第4版)』の著者、訳者を紹介します。

著者:ローレンス・A・カニンガム

ジョージワシントン大学ロースクールのヘンリー・セント・ジョージ・タッカー三世リサーチ教授。コロンビア、コーネル、ハーバードなど、多くの主要大学の学報に研究論文を掲載しているほか、ボルチモア・サン、フィナンシャル・タイムズ、ニューヨーク・デイリー・ニュース、ニューヨーク・タイムズなどに社説を寄稿。

アマゾンではビジネス・投資の部門で上位100人の著者として挙げられています。

監修:長尾慎太郎

東京大学工学部、北陸先端科学技術大学院大学・修士卒。日米の銀行、投資顧問会社、ヘッジファンド、大手運用会社などに勤務。

彼が監修した書籍として、『完全なる投資家の頭の中』『インデックス投資は勝者のゲーム』なども有名です。

訳者:井田京子(第4版)

翻訳者。主な訳書に、『完全なる投資家の頭の中』、『株式投資で普通でない利益を得る』などがあります。

『バフェットからの手紙(第4版)』の概要

本書は1979年から2014年のバフェットからの手紙(バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書に掲載されている、会長からの手紙)の内容を、以下の9つのカテゴリーに合わせてまとめたものです。

  1. コーポレートガバナンス(企業統治)
  2. ファイナンスと投資
  3. 投資の選択肢
  4. 普通株
  5. 合併・買収
  6. 評価と会計
  7. 会計上のごまかし
  8. 税務
  9. バークシャー50周年とその後

本書の内容は企業経営から投資評価の考え方、会計の分析の仕方など、多岐にわたります。バフェットの具体的な投資案件などを例にして解説していますので、その思考過程がわかりやすいです(特に、6.評価と会計が興味深かったです)。

一方、ボリュームがあって、全体の内容をつかみにくいので、最初に序文(ローレンス・A・カニンガムによる各章のまとめ)を読んでから、本文を読み進めることをおすすめします。

『バフェットからの手紙(第4版)』を読んで学んだこと

本書はバフェットの長年の経験と考察が含まれていて、実に奥深い内容です。特に、私が学んだことを2つ挙げます。

  • バフェットの投資判断は一貫して株価ではなく、企業価値(内在価値)にあること
  • 経済的なのれんと、会計上ののれんは分けて考えるべきであること

それぞれについて、以下で詳しく解説します。

バフェットの投資判断は一貫して株価ではなく、企業価値(内在価値)にあること

全体を通して共通しているのは、バフェットの判断基準は株価の上昇ではなく、企業価値(内在価値)の上昇であることです。

たとえば、バフェットは次のように言っています。

「バリュー投資」という言葉は重言になっています。「投資」が、少なくとも支払った金額に見合った価値を求めた結果の行為でないとすれば、一体何なのでしょうか。それと気づきながら、ある株式に価値以上の金額を支払うこと――すぐにさらなる高値で売れるであろうという見込みで――は、投機と呼ぶべきです(それは非合法でも非道徳的な行為でもありませんが、私たちの考えでは経済的には魅力的なことではありません)。

もちろん長期的に見て、投資の意思決定のスコアボードは株式の市場価格だということは事実です。しかし株式の市場価格は、投資先企業の将来の収益によって決まります。投資においては、野球と同じように、スコアボードに特典を記録するためには、スコアボードではなく、球場を見ていなければなりません。

私たちは「安全域」にある価格でしか購入しません。もしある普通株の価値が私たちの計算よりほんの少しでも高ければ、購入を考えることはありません。ベンジャミン・グレアムが力説していたこの「安全域」の原則こそ、投資で成功するための要石であると信じています。

これらの考えはバフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムが説いていたものです。のちにフィッシャーの成長株投資法を取り入れて、投資スタイルが変化したといわれるバフェットですが、企業価値(内在価値)に対する割安さを重視する考え方は一貫しています。

この経済合理的な考えが根底にあるからこそ、バフェットは長く成功し続けることができたのだと感じました。

バフェットは自社の株価についても適正価格であることを望んでいる

さらに、バフェットは自社の株価に対する考え方も一貫しています。

通常、経営者は自社の株価ができる限り上がってほしいと考えることが多いと思います。しかし、バフェットは次のように述べています。

私たちの主な経営目標は、株主全体が得る投資成果を最大化することですが、同時に、ある投資家が他の投資家の犠牲の上に過大な投資利益を上げることをできるだけ少なくすることです。(中略)上場企業では、株価と内在価値がかみ合っているときに公平性が保てます。

つまり、バフェットは自社の株価が必要以上に上昇しなくてもよいと考えていて、内在価値と連動した状態を維持することが大事だと考えているのです。

実際、1995年の報告書(バフェットからの手紙)では「現在のバークシャーの株価は内在価値以上に上昇していて、割安ではない」と注意を呼び掛けたこともあるといいます。

この一貫性と誠実さに、世界一の投資家と尊敬されるバフェットの魅力を感じました。

経済的なのれんと会計上ののれんは分けて考えるべきであること

私はこれまで、米国株は巨大な「のれん」を持つ企業が多いことをリスクの1つだと感じていました。

「のれん」とは企業を買収する際に、買収先企業の純資産を上回って支払った差額のことです。企業の資産・負債状況を表す貸借対照表において、無形資産として計上されるものの1つがのれんです。

日本の会計基準ではのれんを20年以内に均等償却することが定められており、日本企業ののれんはそれほど多くない場合が多いです。この場合は特に問題はありません。

一方、米国の会計基準ではのれんは均等償却されず、維持されたままです。そのため、米国株ののれんは大きくなりがちです。

のれんが大きくても、業績が良い間は問題ないです。しかし、業績が悪化して、のれんに相当する経済的価値がなくなったと判断された場合は、巨額の減損が突然発表されて、突如赤字になったり、大幅減配になったりする場合があります。

私はのれんのような無形資産は実体がないので、価値が低い(または無い)資産であると考えてきました(バフェットの師匠である、ベンジャミン・グレアムの考え方です)。むしろ、のれんは突然の減損と株価の暴落につながる可能性があるからできれば避けたいと考えていました。

バフェットののれんに対する考え方

しかし、バフェットは会計上ののれん(上記で述べた、買収に伴って発生する無形資産)と経済的なのれん(企業の競争力を表し、利益の源泉となる無形資産)を区別したうえで、次のように言っています。

私自身について申しますと、投資に際しては有形資産を好むべきであり、価値が経済的なのれんに大きく依存している企業を避けるようにと35年前に習ったときからは、劇的に考え方が変わっています。そのような偏見が投資活動の上で(手数料はかけずにすみましたが)多くの重要な機会を見逃すという過ちにつながりました。

その企業が無借金であると仮定した場合、のれんの償却費を無視して、有形固定資産当たりいくらの利益を上げているかを見ることがその企業の経済的な魅力を測る最良の方法だと思います。

(注. ここでの有形固定資産は売掛金を含む)

その理由として、バフェットは以下のように言っています。

有形資産を多く抱える企業は一般的に低い利益率しか示せず、しばしばインフレによって必要になる追加資本すら生み出すことができず、実質的な成長、株主への配当金や新規の企業買収のための資金はほとんどありません。
対照的に、インフレ期では、長期的な価値を持つ無形固定資産を持ち、有形固定資産への資本投下が相対的に少なくて済む企業への投資が不釣り合いなほど大きな成果を上げてきました。

つまり、バフェットは資産価値をベースにした会計的な企業評価から脱却して、競争優位性を表す経済的なのれん(有形固定資産当たりの利益額)を重視すべきだと言っています。

経済的なのれんの考え方は現在の企業の成長性・収益性評価に適合している

バフェットの経済的なのれんの考え方は、現在の企業の成長性・収益性をみると納得がいくことが多いです。

たとえば、アップルやグーグルのようなハイテク企業は有形固定資産が少ないです。稼いだ利益を再投資するときの効率がよいので、さらなる高成長が見込めるという特長があります。

一方、自動車会社や航空会社などは有形固定資産への巨額の投資が継続的に必要です。有形固定資産への投資が成長の足かせとなるため、ハイテク企業のような高成長を期待しにくいというデメリットがあります。

今まで、私は会計上ののれんにとらわれて評価していました。しかし、本書を読んで会計上ののれんにとらわれず、経済的なのれんの大きさで評価しなければいけないと感じました。

経済的なのれんの重要さと、その評価基準を本書から学べたのは大きな収穫だったと感じています。

まとめ

本記事では『バフェットからの手紙 (第4版)』の内容を簡単にまとめ、私が感じたことについて紹介しました。

本書は高度な内容が多く含まれています。他の書籍を読んだり、実際の投資経験を積んだりしないと理解しにくい内容も多いです。

しかし、最初はよくわからなかった内容でも、投資経験を積んでから読み返すとまた新たな発見が多くあります(私は今回、2回目に読んで改めてバフェットの考察の深さを感じました)。

読めば読むほどバフェット流バリュー投資の奥深さを実感できます

企業の本質的価値(内在価値)に基づいた割安株(バリュー株)投資をしたいという方は、『バフェットからの手紙 』を読んでみるとよいです。

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