割安株投資(バリュー株投資)は日本人の性格に適しているといわれており、日本の個人投資家に人気があります。
割安株を見つけるにはどうすればよいですか?おすすめの見つけ方やスクリーニング方法などはありますか?
割安株を探すには、企業価値評価手法を使うのがおすすめです。収益性と資産性で総合的に判断するため、PERやPBRよりも合理的に判断できます。
本記事では、私が用いている割安株の判断方法(株価指標)と無料の分析ツール、その使い方の注意点について紹介します。
先に結論からいうと、割安株投資をするなら、無料で企業価値(理論株価)分析ができるGMOクリック証券の財務分析ツールを活用するとよいです。
- 企業価値評価手法はいろいろな考え方があるが、私のおすすめは山口揚平氏のやり方。合理的、かつ実用的なので、使いやすい(山口氏についてはこちら)。
- 企業価値から算出した理論株価は長期的な株価の目安になる(理論株価の計算方法はこちら)。
- GMOクリック証券 の財務分析ツールを使えば、無料で手軽に銘柄選びできるので便利。本ツールはもともと山口氏の会社が開発したツール。
- 企業価値評価手法(バリュエーション)による理論株価分析の概略
- 企業価値評価手法による簡単な割安株の見つけ方(GMOクリック証券の財務分析ツールがおすすめ)
- 山口氏の企業価値評価の考え方は簡易的だが、実用的
- 優良な割安株(バリュー株)の見つけ方の具体例
- 割安株(バリュー株)のスクリーニングでおすすめな、6つの検索ツールの比較
- GMOクリック証券のスクリーニングツールの機能
- 割安株のスクリーニングの具体的な手順
- 割安株(バリュー株)投資の注意点
- まとめ
- 補足1.PER、PBR、配当利回りによる割安株の探し方と注意点
- 補足2.実際に投資する際は割安さだけでなく、優良銘柄であることも大事
- 補足3.理論株価分析は短期的な株価を予測するものではないので、長期のスタンスで投資する必要がある
- 補足4.他のスクリーニングツールの特徴
企業価値評価手法(バリュエーション)による理論株価分析の概略
最初に、企業価値評価手法の概略について説明します(前述の山口氏のほか、多くのバリュー投資家に共通する考え方です)。
企業価値評価手法では、企業の収益性と資産性をそれぞれ評価した結果から、総合的な企業の経済的価値(企業価値)を推計します。
企業価値を1株当たりの金額に換算したものは理論株価と呼ばれ、割安度の目安になります。図で表すと、以下のイメージです。
事業価値と資産価値から理論株価を計算し、実際の株価が理論株価より安ければ割安と判断されます。
企業価値評価手法は、M&Aで企業の買収価格を計算するときによく使われる手法です。
個人の株式投資とM&Aに何の関係があるのかと思うかもしれませんが、1株買うのも全株買うのも、規模が違うだけで本質的に同じです。
だから個人の株式投資における適正価格の計算にも企業価値評価手法を使うことができます。
企業価値の基本的な考え方(資産価値と事業価値の合計と考える)
企業価値という漠然としたものをなぜ金額に換算できるのでしょうか?その基本的な考え方を簡単に説明します。
そもそも株式は企業のオーナーとしての権利です。よって、企業の経済的な価値は、
- これまで稼いで蓄えてきた資産(資産価値)
- これから稼ぐであろう利益(事業価値)
の合計で評価できると考えられます。
つまり、資産性と収益性を合計して評価する手法が、「企業価値評価手法(バリュエーション)」です。
企業価値評価手法は、PERとPBRの特徴を合わせたような考え方です。
企業価値評価手法で理論株価を計算するには財務分析が必要
企業価値評価手法では企業の財務内容(価値のある資産がどれだけあるか、負債の額はどれだけあるかなど)と業績(将来稼ぐであろう利益はどのくらいか)から理論株価を計算します。
したがって、企業価値評価手法を使って割安株探しをしたいなら、財務諸表を読み解けるようになる必要があります。
最初はやや難しいかもしれませんし、計算するにはそれなりに時間がかかりますので大変です。しかし、一度理解して慣れてしまえば投資判断がしやすくなります。
後で述べるような自動的に計算できるツールもありますので、それほど大変というわけではありません。
割安株投資で成功したいなら企業価値評価手法を用いることをおすすめします。
理論株価の計算方法はいろいろありますが、その考え方と計算式を以下の記事で比較しています。詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
企業価値評価手法による簡単な割安株の見つけ方(GMOクリック証券の財務分析ツールがおすすめ)
企業価値評価手法は財務諸表を読み解かないといけないので、ある程度の手間がかかります。
もっと手軽に企業価値評価手法による理論株価を知りたいなら、GMOクリック証券 が無料で提供している財務分析ツールがおすすめです(口座保有者のみ閲覧可能)。
GMOクリック証券の財務分析ツールはもともと山口揚平氏の会社が有料で提供していたサービス
実は、GMOクリック証券 の財務分析ツールは、前述の山口揚平氏が運営していた投資情報サイト「シェアーズ」で有料で提供されていたサービスです(のちにGMOクリック証券が受け継いで、口座開設者に無料で提供されるようになっています)。
GMOクリック証券 の財務分析ツールの計算方法は私が用いている方法と多少異なります。しかし、基本的な考え方は同じなので、おおむね似た計算結果になります。理論株価を簡易的に調べたいときに便利なので、私は参考値として使っています。山口氏の企業価値評価の考え方は簡易的だが、実用的
ここで、前述の山口揚平氏について簡単に紹介します。
山口揚平氏はもともと大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事したのちに独立・起業した方で、現在はコンサルタントで投資家、企業家です。
山口氏は企業価値評価に詳しく、上記の企業価値の考え方は山口揚平氏の著書『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』を基にしています(私はこの本を読んでから、企業価値評価のすばらしさに気づきました)。
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— 山口揚平 「1日3時間だけ働いて穏やかに暮らすための思考法」プレジデント社から発売中) (@yamaguchiyohei) September 21, 2018
正確に間違えるよりも大雑把に正しいほうがましだ(ウォーレン・バフェット)
企業価値評価手法には絶対の正解というものはなく、人によってやり方は様々です。山口氏の手法は企業価値評価手法の中では簡易的なものであり、大雑把すぎると感じる方もいるかもしれません。
しかし、バリュー投資の神様と呼ばれる、ウォーレン・バフェットは「正確に間違えるよりも大雑把に正しいほうがましだ」といいます。
山口氏の方法は簡易的でありながらも、十分割安さの目安として使えると私は感じており、むしろ実用的で使いやすいです。
山口氏の企業価値評価手法についての評判・コメント
山口氏の企業価値評価手法について書かれた評判・コメントをみると、以下のようなものがあります(引用元:ツイッター)。
この方の本は全て人におすすめできます☺️
株に関する入門書はこれでした。
株価のバリュエーションについても平易な文章且つ図解もふんだんに説明があります📘
山口楊平さん/知ってそうで知らなかったほんとうの株のしくみ pic.twitter.com/V7CcfwCBRc
— けだま@投資ブログ運営🐈 (@kedamafire) September 1, 2019
知ってそうで知らなかった ほんとうの株のしくみ 山口 揚平 https://t.co/2H98kk7rpA 企業の本質価値を見抜き、割安な価格で株を買うことが投資の本質。価値と価格の差を見抜くという視点は目から鱗。簡略化した企業価値算定の説明がわかりやすく、ここでも事業価値は営業利益の10倍との目安が。
— まこやん (@makoyan_225) March 13, 2019
ほんとうの株のしくみ 山口揚平さんの本。彼の本は小難しくない形で株式市場の理解をできるからIRを読みたい・企業分析を学びたい大学生にはオススメしたい。ざっくり過ぎると言うコメントする人もいそうですが僕は好きです。 #svir pic.twitter.com/LxGb8FIog8
— 木下 慶彦 Bot / skyland.vc (@kinoshitay) April 16, 2017
企業の本質的価値を測ることで投資に役立ちそうというツイートが多いですね。私も企業価値評価手法を知ってから、大きな失敗をすることは明らかに減ったと感じています。
山口氏の手法そのものでなくてもいいですが、本格的に投資をしたいなら企業価値評価の考え方を知っておくとよいです。
優良な割安株(バリュー株)の見つけ方の具体例
これまでの説明だけでは企業価値評価手法による割安株投資のイメージがわかなかったかもしれません。
そこで、割安度分析の使い方の例として、私が2016年に購入した「中央自動車工業」の取引事例を紹介します。
中央自動車工業は国内向けコーティング剤や海外向け自動車補修部品など自社企画の自動車用品を販売する会社です。高付加価値品の販売が国内、海外で好調な会社です。東証2部上場でややマイナーな企業ですが、好財務な企業として定評があります。
中央自動車工業の長期の業績推移をみると、リーマン・ショックのころに一時低迷していますが、2012年以降は売上も営業利益もほぼ右肩上がりです。
一方、GMOクリック証券の財務分析ツールで理論株価と実際の株価の関係を見てみると、以下のようになっていました。
※株主価値 → 理論株価、市場価値 → 実際の株価と置き換えて見てください。
私が2016年に初めて投資した時点で、理論株価に対して実際の株価は約42%も割安となっていました。
株価が大幅に割安であるうえ、今後も業績の拡大が期待できて好財務であるため、長期保有できると考えて購入しました。購入時の単価は890円でした。
購入したのちは、四半期ごとに決算報告書を見ていったところ、期待通り順調な業績拡大が続きました。
業績拡大とともに株価も徐々に上がっていき、一時は2100円を超えたこともあります。買値の2倍以上になったわけです。
しかし、2018年4~6月期の業績にやや陰りが見えてきました。さらに、2018年春頃から米中の貿易摩擦や日米の自動車関税の問題などで自動車業界全体に逆風が吹き始めました。
この時の理論株価は下図のようにまだ割高ではありませんでしたが、以前ほど割安ではなくなっていました(約21%の割安)。
自動車業界は業績が景気に左右されやすいという特徴があります。早めに売却して利益確定するほうがよいと考えて、2018年8月に中央自動車工業の株を売却しました。
高値からはだいぶ下がってしまいましたが、それでも1601円で売却できました。
以下が実際の取引履歴です。
最初に100株を8.9万円で購入し、2年間の保有後に約16万円で売却しています。この間、3回の配当で合計0.6万円を得ています。
つまり、約2年間の保有で87%の利益を得られました。
中央自動車工業の保有期間(2016年11月4日~2018年8月6日)におけるTOPIXの騰落率を調べると、約29%です。
中央自動車工業への投資はTOPIX連動型のインデックスファンドの成績を大きく上回っており、この投資は成功であったといえます。
中央自動車工業の事例のように、GMOクリック証券 の理論株価を目安として使うことで有望な割安株を見つけることができます。
割安株(バリュー株)のスクリーニングでおすすめな、6つの検索ツールの比較
割安株の考え方はわかっても、銘柄情報画面でひとつずつ割安度を確認していくのは大変です。日本の上場企業は約3700社ありますので、すべての銘柄を確認していたら、どれだけの時間がかかるかわかりません。
そこで、おすすめなのが、スクリーニングツール(複数の条件を指定して、該当する銘柄をコンピューターで絞り込む機能)です。スクリーニングツールを使えば、簡単に割安株を探すことができますので、便利です。
無料で使えるものから有料のものまで、いろいろなスクリーニングツールがあります。あらかじめ用意されているスクリーニング条件もそれぞれ異なりますので、用途に応じて使い分けるとよいです。
例えば、以下のようなスクリーニングツールがあります。
番号 | スクリーニングサービス提供元 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
1 | GMOクリック証券 | ・上記の理論株価による割安度で絞り込める ・同口座内で財務分析も簡単にできる ・無料(口座開設者) | ・スクリーニング条件のカスタマイズができない |
2 | 楽天証券 | ・EV/EBITDA倍率による割安度で絞り込める ・無料(口座開設者) | ・スクリーニング条件のカスタマイズができない ・現金以外の資産を考慮できていない |
3 | 会社四季報CD-ROM | ・自由にスクリーニング条件をカスタマイズできる | ・高価(年間2~3万) |
4 | トレーダーズ・ウェブ | ・PERやPBRなど、37の指標でスクリーニング可能 ・無料 | ・簡易的な指標しかない |
5 | 株マップ | ・PERやPBRなどで簡易に検索できる ・無料(詳細スクリーニングは有料) | ・簡易的な指標しかない |
6 | SBI証券 | ・PERやPBR、クォンツスコアなどで簡易に検索できる ・無料(口座開設者) | ・簡易的な指標しかない |
四季報CD-ROMのスクリーニングツールは超高機能だが、価格が高い
中でも、3の会社四季報CD-ROMは自由にスクリーニング条件を作成できるという他にはない魅力があります。どういう計算式にするかを考えたり、計算条件をプログラミングしたりという手間はかかりますが、一度設定を終えればずっと使えますので、銘柄選びが格段に楽になります(私も四季報CD-ROMをずっと使っています)。
ただし、四季報CD-ROMは値段が高価(年間2~3万円かかる)なので、最初から四季報CD-ROMを使うのはおすすめしません。
GMOクリック証券のスクリーニングツールは、無料で割安株を絞り込める
一方、無料ツールの中でみると、一番おすすめなのはGMOクリック証券 です。先述の理論株価を使って手軽に割安株を絞り込めるうえ、同口座内で財務分析も簡単にできます。
つまり、GMOクリック証券を使えば、銘柄調査をワンストップでできるので便利です(私も確認用として使っています)。
以下では、GMOクリック証券のスクリーニングツールについて、詳しく解説します(2~6については、補足2.他のスクリーニングツールの特徴をどうぞ)。
GMOクリック証券のスクリーニングツールの機能
GMOクリック証券が無料で提供しているスクリーニングツールを使えば、前述の理論株価に対して割安な株を簡単に絞り込むことができます。
実際に、GMOクリック証券で用意されているスクリーニング条件を見ると、以下のようになっています。
「割安度」の項目が、前述の理論株価に対する現在の株価の割安度を表しています。割安度を〇〇%以上と設定してスクリーニングすることで、簡単に割安株を見つけられます。
おすすめのスクリーニング条件の一例
株価が割安でも業績が悪い株などはあまり株価上昇を期待できないことが多いです。
そのような銘柄を除外するには、複数の条件をつけてスクリーニングするとよいです。
ただし、残念ながらGMOクリック証券で設定できるスクリーニング条件は他社と比較してあまり充実しているわけではありません。
用意されている条件の中でおおざっぱにスクリーニングし、後は自分で詳細を確認することをおすすめします。
スクリーニング条件の一例として、以下のような条件を設定してみるとよいです。
- 割安度:30%以上
- 黒字:5期連続以上
- PER:10倍以下
- PBR:2倍以下
- ROE:10%以上
- ROA:5%以上
- 株主資本比率:40%以上
上記のスクリーニング条件を設定して検索すると、96社を抽出できました(2019年4月)。
もちろん上記のスクリーニング条件で選ばれた銘柄のすべてが投資する価値のある銘柄というわけではありません。中には業績が下降中の銘柄などもありますので、中身を精査しないといけません。
しかし、約3700社の中から96社に絞り込めれば、割安株探しの手間はかなり減らせます。本格的に割安株投資をしたいなら、GMOクリック証券 のスクリーニングツールを使うと便利です。
割安株のスクリーニングの具体的な手順
スクリーニングというと、難しそうに感じる方もいるかもしれません。しかし、既存のスクリーニングツールを使うならば、それほど難しいものではなく、一度使ってみると、簡単に銘柄候補を探せることに感動すると思います。
以下の記事では、楽天証券のスクリーニングツールを例として、スクリーニングの具体的な手順を解説していますので、詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
長期投資におけるスクリーニングのコツと、失敗しないための2つの注意点
割安株(バリュー株)投資の注意点
上記では理論株価による割安度診断の方法を示しました。しかし、実際の株価は必ず(短期的に)理論株価に近づくというわけではありません。何も考えずにツールの結果を信じてしまうと失敗してしまいます。
理論株価を用いた割安株投資において、以下の3つについて注意するとよいです。
- 株価が下落トレンドであるときに買わない
- 割安な株価が修正されるまでに時間がかかる(長期的な視点で投資しないといけない)
- 企業価値の計算は推測が混ざっているため、不確実である
上記の注意点と対策については以下の記事でまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
理論株価(適正株価)の使い方の注意点
まとめ
本記事では割安株の見つけ方と、簡単に割安株探しができるスクリーニングツールについて紹介しました。
割安株投資で大事なのは、どうやって割安度を判断するかです。企業価値評価手法は株式の価値を資産性と収益性を総合して判断できますので、合理的に株価の割安度を計算することができます。
PERやPBRを使う方法より手間はかかりますが、GMOクリック証券 が無料で提供しているツール(財務分析ツール・スクリーニングツール)を使えば比較的簡単にできますから、おすすめです。
割安株投資に興味があるなら、まずは企業価値評価手法による割安度診断(GMOクリック証券 のツール)を試してみることをおすすめします。
関連記事:
補足1.PER、PBR、配当利回りによる割安株の探し方と注意点
割安株選びでよく使われる指標としてPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)、配当利回りがあります。これらの指標の意味とメリット、デメリット、注意点について簡単に解説します。
PERとPBR、配当利回りの定義と目安
PER、PBR、配当利回りの定義と適正値の目安、割安度の見方は以下のようになっています。
指標 | 定義 | 適正値の目安 | 割安度の見方 |
---|---|---|---|
PER | 株価÷1株あたり当期純利益 | 15~20倍 | 小さいほど割安 |
PBR | 株価÷1株あたり純資産 | 1~2倍 | 小さいほど割安 |
配当利回り | 年間配当金÷株価 | 1~5% | 大きいほど割安 |
PER、PBR、配当利回りは代表的な割安度の指標であり、ヤフーファイナンスや証券会社のホームページ(銘柄情報画面)などで簡単に調べられるため、便利です。
また、PERやPBR、配当利回りはほとんどのスクリーニングツールで対応していますので、手軽に使いやすいというのもよい点です。
ただし、下図のように、PERやPBRの平均値は業種ごとに大きく異なる点に注意が必要です
PERやPBRを使うときは、業種平均と比較することが大事です。
東証上場企業の「規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧」を調べるには、以下を参照するとよいです。
規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧
PERとPBR、配当利回りのメリット・デメリット(注意点)
PERとPBR、配当利回りは簡単に使えて便利ですが、その使い方には注意が必要です。気を付けるべき点はいろいろありますが、そのメリット・デメリットをまとめると、下表のようになります。
指標 | 良い点 | 悪い点 |
---|---|---|
PER | 過去の業績にとらわれずに判断するので、将来を見据えた投資がしやすい | 単年度の業績(利益額)から判断するので、振れが激しく、景気循環の影響が大きい業種では判断が難しい |
PBR | 過去の利益の蓄積で評価するので、業績の変動の影響を受けにくい | 現在~将来の業績が悪いと万年割安状態に陥る |
配当利回り | 予測しにくい値上がり益よりも、配当金額の多さのほうがわかりやすい | 配当金額は経営陣の意向次第で変わるので、配当利回りが高いからといって割安とは限らない |
どれも一長一短があり、正直言って判断が難しいケースもよくあります。PERでは割安なのに、PBRでは割高みたいな場合もあるため、判断に困ることも多いです。
PERやPBR、配当利回りだけでわかることには限界があるため、当サイト(ロイナビ)では、PERやPBR、配当利回りだけで割安株を判断することはおすすめしません。
割安さの指標としておすすめな理論株価の考え方(企業価値評価手法)についてみるにはこちら
ただし、PERやPBRは投資家の多くが使っている指標ですし、無視はできないです。目安として使うことをおすすめします。
PERやPBRの活用方法と注意点について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
割安株の指標PER・PBRの目安は?その意味と使い方、注意点について解説
高配当利回りの注意点と、高配当株の選び方についてはこちらの記事もどうぞ。
長期保有におすすめな高配当・優良株の選び方(2つの投資戦略と注意点)
補足2.実際に投資する際は割安さだけでなく、優良銘柄であることも大事
本記事では株価の割安さに特化して解説しました。
しかし、株価が割安な銘柄の中には業績が悪い企業が多く、いつまで経っても割安さなまま放置される場合がよくあります(このような状態をバリュートラップといいます)。
バリュートラップに陥らないためには、以下のような観点も総合的に重要です。
観点 | スクリーニング指標の例 |
---|---|
株価が割安である | PER、PBR、理論株価(企業価値評価手法) |
業績が成長している | 売上成長率・利益成長率 |
利益率が高い | 営業利益率 |
株主還元に積極的である | 配当利回り、配当性向 (&株主優待・自社株買いを実施しているか) |
これらのバランスが良い銘柄は、長期的に企業価値が向上しやすいので、株価も徐々に上昇することが多いです。長期投資をするなら、このような銘柄を選ぶとよいです。
補足3.理論株価分析は短期的な株価を予測するものではないので、長期のスタンスで投資する必要がある
企業価値評価手法による理論株価分析の考え方は、需給による変動を完全に無視します。したがって、短期的な株価を予測することには適していません。
もし短期的に(数日~数か月で)成果を出したいというのであれば、この手法は向いていません。
しかし、世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットの師匠、ベンジャミン・グレアムは以下のように言っています。
短期的にみると、株式市場は人気投票装置である。しかし、長期的にみれば、価値計測装置である。
つまり、短期的な株価は需給に左右されるが、長期的な株価は企業価値で決まるという意味です。
※企業価値を1株あたりに換算したものが理論株価です。つまり、長期的な株価は理論株価で決まると言い換えられます。
実際、グレアムやバフェットは企業価値を基準としたバリュー投資で成功しており、長期的に高いパフォーマンスを示している投資家はバリュー投資家が多いといわれます。
企業価値評価手法は、長期的な目線で考えて割安株投資をしたいという方に適しています。
補足4.他のスクリーニングツールの特徴
ここでは、他のスクリーニングツールの特徴について、簡単に解説します。
楽天証券のスクリーニングツール:EV/EBITDA倍率でスクリーニングできる
GMOクリック証券の理論株価と似た割安度の指標として、EV/EBITDA倍率があります。
PERやPBRほど有名な指標ではないので、対応しているスクリーニングツールは多くないですが、楽天証券ならばスクリーニング可能です(口座保有者は無料で使用できます)。
EV/EBITDA倍率の定義
EV/EBITDA倍率の定義は以下です(いろいろなバリエーションがありますが、楽天証券の場合です)。
どういう意味か分かりづらいですが、実は企業価値評価手法と同じ概念を表しています。
EV/EBITDA倍率の意味
EV/EBITDA倍率の意味を簡単に説明します(難しければ飛ばしてもよいです)。
まず、企業価値評価手法における割安の条件式は以下のようになります。
事業価値は、EBITDA=営業利益 + 減価償却費 のK倍、
資産価値は、現預金 – 有利子負債、
EV = 時価総額 + 有利子負債 – 現預金
として割安の条件式を整理すると、割安の条件式は以下のようになります。
つまり、EV/EBITDA倍率がKより小さいと、割安であるということになります。
定数Kは、資産価値+事業価値が時価総額相当になるにはEBITDAの何倍稼げばよいかという指標です。一般的に用いられるKの平均値は6~8倍くらいといわれますので、目安として、Kが5倍以下であれば割安株であると考えておくとよいです。
ただし、楽天証券のEV/EBITDA倍率の場合、現預金以外の資産を考慮していません。そのため、現預金は少ないけれども、有価証券や棚卸資産、固定資産などが多い企業を見過ごしてしまう可能性が高くなります。
GMOクリック証券 では現預金以外の資産も考慮して計算しているため、隠れた優良銘柄を見つけられる可能性が高まります。どちらかというと、GMOクリック証券のスクリーニングツールをおすすめします。EV/EBITDA倍率でスクリーニングした結果
ちなみに、楽天証券 のスクリーニングツールでEV/EBITDA倍率が5倍以下の銘柄を探したところ、全3761社中、973社ありました(2019年4月)。つまり、上場企業全体の1/4くらいに絞られたということです。
この中からさらに業績などの条件でスクリーニングしてけば、さらに有望な企業を絞りこむことができます。
楽天証券の評判と口コミ。投資信託が豊富でポイントがたまりやすいのでおすすめ
会社四季報CD-ROMのスクリーニングツール:本格的に割安株投資をしたい人に超おすすめ
GMOクリック証券、楽天証券のスクリーニングツールは便利ですが、予め用意されているスクリーニング条件しか使えないことがデメリットです。
自分でスクリーニング条件をカスタマイズして使いたいという方におすすめなのが、『会社四季報CD-ROM』のスクリーニングツールです。
『会社四季報CD-ROM』を使えば、複雑なスクリーニング条件を自由自在に作れます。
スクリーニング条件を作るのは少し大変ですが、一度、組んでしまえば、繰り返し使えます。割安株(バリュー株)を探す作業が大幅に楽になりますので便利です。
ただし、会社四季報CD-ROMの唯一のデメリットは価格が高いことです。投資資金が少ないうちはなかなか使いづらいと思いますので、最初は無料で使えるGMOクリック証券や楽天証券のスクリーニングツールがおすすめです。
一方、ある程度の資産規模がある方は元をとれると思いますので、会社四季報CD-ROMを使うとよいです。
トレーダーズウェブや株マップのスクリーニングツール:無料で試せる
トレーダーズウェブと株マップでは、会員登録や口座開設などをする必要がなく、無料でスクリーニングツールを使えます。機能はあまり多くないですが、PERとPBRによるスクリーニングができます。
PERやPBRはほとんどの人がチェックしている指標なので、これらだけでお宝バリュー株を探すのは正直いって、難しいと思います。しかし、無料で試しにスクリーニングツールを使ってみたいという場合にはトレーダーズウェブや株マップは良いと思います。
SBI証券のスクリーニングツール:PERやPBR、クォンツスコアでスクリーニングできる
SBI証券のツールもスクリーニング条件はそれほど多くないです。しかし、SBI証券ではクォンツスコア(クォンツリサーチ株式会社が各銘柄の成長性や割安性、企業規模、テクニカル、財務健全性、市場トレンドに対して、定量的に点数をつけて評価したもの)でスクリーニングすることも可能です。クォンツスコアを使えば、手軽に優良銘柄を探せるので便利です。SBI証券の口座保有者なら無料で使用できます。