- 「業界大手の優良企業に長期投資しているのに、あまり儲からないのはなぜ?」
- 「狙い目の銘柄を見つけるにはどうしたらいい?」
しかし、「大手優良企業は投資先として本当に優良」でしょうか?
もちろん優良な場合もあると思いますが、実際にはそうでない場合も多くあります。なぜなら、株式投資で成功するにはもう一つ重要な観点があるためです。
本記事では、優良銘柄に長期投資するだけでは儲からない理由と、株式投資における本当の優良銘柄を探すコツについて、私の考えを紹介します。
株価が高い優良企業の株に長期投資するだけでは儲からないことの具体例
最初に、投資初心者が選びがちな大手優良企業に投資するとどうなるかについて、具体例を挙げて示します。
投資初心者にとっての、一般的な優良株のイメージ
一般的に優良銘柄というと、以下のようなイメージではないでしょうか?
- 有名な大企業である
- 業績が良い
- 国際的に活躍している
- 東証1部上場である
- 期待されているテーマに沿っている(最近だとAI、IoTとか)
- テレビでたびたび特集されている
- CMをバンバンやっている
たとえば、日本で時価総額1位のトヨタ自動車などです。
私も投資初期のころは、東証1部上場企業の中で業績がよくて優良といわれている企業を中心に投資していましたので、気持ちはよくわかります。
しかし、大手優良企業だからと言って、必ずしも投資先として有望というわけではありません。
例えば、2007年にトヨタ株に投資したら、どうなるか?
例えば、トヨタに投資したらどうなるかについて見てみましょう。
11年前の2007年初は、トヨタの営業利益が日本企業で初めて2兆円を超え、絶好調だった時期です。この頃にトヨタ株を7500円で買っていたとしたら、どうなるでしょうか?
以下はトヨタの長期の株価チャートです。
翌年のリーマンショック後、一気に株価は半値以下になって、2012年までずっと低迷してしまいました。アベノミクス開始の2013年頃にようやく復活し、2018年6月現在は7500円くらいになりましたが、約10年かけてようやく含み損が解消できたという状況です。
もちろん配当を含めれば1500円くらい、プラスになっていると思いますが、10年以上かけたのに、あまり儲かったとはいえませんね。。。
これは、トヨタだけの話ではありません。同様に、10年以上前から優良株とみられていた、キヤノンの株価チャートを見てみましょう。
リーマンショック後に急落して以降、07年の高値の半額程度です。
よって、優良企業に長期投資しても、必ずしも儲かるわけではないのが、株式投資の実態です。
狙い目な優良銘柄とは、業績好調だけど、株価が割安な銘柄
では、株式投資における本当の狙い目銘柄とは何でしょうか?
私は「業績が好調だけど、株価が割安な銘柄」だと考えています。
基本的に株式の価値は会社の発展とともに向上するものですから、業績がよい会社は株価が上がっていきます。
しかし、業績好調で人気のある企業は、たくさんの投資家が注目しているため、株価が割高になっているケースが多いです。
業績が良くても、割高に買ってしまうと、人気がなくなったときに株価が急落してしまいます。業績だけで買うのはやめておくことをおすすめします。
(関連記事:バリュー株投資家によるグロース株投資の失敗談。。。)
一方、業績好調な企業でも割安に放置されている企業は、わずかながら存在しています。本当の狙い目銘柄とは、「業績好調なだけではなく、株価が割安」な銘柄です。
業績の好調さと株価の割安度が乖離する理由
業績好調な優良企業の株価が割高になりやすい理由は何かというと、株価は短期的には需要と供給の関係で決まるからです。
投資家に人気があって有名な優良銘柄は実態以上に評価されて買われるため、本当の企業価値以上に株価が高くなってしまいがちなのです。
一方、あまり知名度がない企業の場合、たとえ優良企業であっても買おうとする人が少ないです。その結果、優良企業なのに株価が割安になることがあります。
このような銘柄が長期投資で狙い目の銘柄です。長期で保有していればいずれ株価が見直されて上昇しますので、長期投資に適しています。
株式投資をするなら、企業の価値と株価は一致しないと考えておくとよいです。
狙い目な割安・優良株の特徴
では、業績良好で、かつ株価が割安な企業はどういう企業に多いのでしょうか?割安さと、事業内容の2つの側面から解説します。
1.割安な銘柄は中小型企業に多い
株価が割安に放置される企業とは、どんな銘柄に多いのでしょうか?
結論から言ってしまうと、知名度のない中小型企業です。例えば、Russell/Nomura日本株インデックスを用いて、大型銘柄と小型銘柄の平均PBRを比較してみます。
- 大型銘柄(Large:350銘柄)
- 小型銘柄(Small:1250銘柄)
※PBRは資産性からみた割安度を表す指標です。PBRが小さいほど割安なことを表しています。
小型銘柄は大型銘柄よりも明らかに割安ですね。
小型株のデータは1250銘柄の平均値ですので、PBRが1倍を切っているものもたくさんあります。中には、PBRが0.5倍程度の銘柄もあります。
PBRは1倍が解散価値といわれ、理論的な下値のメドとされています。小型株の中には、かなり割安に放置されている銘柄があることがわかります。
知名度がない中小型企業は割安に放置されがち
知名度のない中小型企業は、なぜ割安になりがちなのでしょうか?
たとえば、以下の理由が考えられます。
- IR(投資家向け広報)が充実していないため、投資家が気づかない
- 英語での広報に対応していない場合が多く、海外投資家が参入しづらい
- 時価総額が小さい、もしくは出来高が少ないと機関投資家が参入しづらい
単に知名度がないだけでなく、言語や時価総額の壁があるため、大口の投資家が参入しづらいのが実際なのです。
このため、中小型企業は、日本の個人投資家の影響力が比較的大きく、よい情報があまり知れ渡っていないのが実状なのです。
したがって、中小型銘柄は優良企業であっても、株価が割安に放置されやすく、個人投資家にとってチャンスの塊なのです!
個人投資家の中には、投資先を東証1部上場企業のみに制限している人もいると思いますが、中小型企業に対する見方を変えると、チャンスが広がりますね!
株価の割安度を判断する方法
では、株価の割安さを、どうやって判断すればよいでしょうか?
割安さの判断指標としては、PERやPBRなどが有名です。PERやPBRは手軽に使えますし、各証券会社が無料で提供しているスクリーニングツール(複数の条件に該当する銘柄をコンピュータで自動的に絞り込んでくれるツール)でも簡単に検索できますので便利です。
しかし、純利益や純資産の質が考慮できないため、表面上は割安に見えても、実は割高なケースもあります。PERやPBRは使い方に注意が必要です。
よって、私もこれらを使ってはいますが、参考指標としての使い方にとどめています。
(参考記事:割安株の指標PER・PBRの目安は?その意味と使い方、注意点について解説)
一方、私が割安度の判断指標として用いているのが、企業価値評価手法(バリュエーション)です。企業価値評価手法は、M&Aなどでの購入金額算出にも使われる手法であり、収益性と資産性を総合的にみて判断する手法です。
少々手間はかかりますが、合理的にやりたいという方にはおすすめです。
理論株価(適正株価)の計算方法と使い方の注意点。おすすめは企業価値評価手法
2.狙い目な業績良好企業はニッチな分野に多い
割安な好業績銘柄を狙いたい場合、どんな事業を行っている会社を探せばよいでしょうか?その特徴を紹介します。
ニッチな分野は割安かつ高収益になりやすい
中小型銘柄で好業績な企業は、ニッチな分野で勝負している企業が多いです。ニッチな業界は競争環境が激しくないことから、高収益な企業が多くあります。
一方、知名度はあまりないので、株価が割安になりがちです。ニッチな分野で好業績な企業を発掘するのは、まさにお宝さがしみたいなものです。
今話題の注目テーマへの投資は危険!
一方、注意してほしいのは、話題の注目テーマへの投資です。例えば、2018年でいうと、AIとかIoTなどですね。投資初心者ほどテーマ株に手を出しやすいですが、テーマ株は本当に狙い目でしょうか?
確かに業績は期待できるかもしれませんが、すでに他の投資家が目をつけていますので、株価が割高になっています。ブームが過ぎた後は、株価が急落する可能性があります。中には割安な銘柄もあるかもしれませんが、労力に対して、実りは少ないと思います。
テーマ株の観点から好業績銘柄を探すのは、できるだけ避けるほうが無難だと思います。
どうやって好業績を判断するか?
好業績銘柄の観点は、2つあります。
1つ目は、営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)です。競争力がある会社は高価格を維持できるため、利益率を高く保つことができます。
また、競争力がある会社は不況に対する耐性も強く、比較的安定しています。
競争力の指標として、営業利益率を用いるとよいです。私の場合、営業利益率が10%以上あれば、高利益率とみています。
2つ目は、売上高と営業利益の伸びです。株価は業績成長期待があると、上昇しやすくなります。
よって、売上高・営業利益が停滞している成熟企業よりも、毎年数%でもいいので、売上高・営業利益が伸びている企業を選ぶほうが良いでしょう。
不安な方は最初は単元未満株を使って少額から分散投資するとよいです。単元未満株なら1株から買えるので、リスク小さく始められて便利です。
狙い目な優良株の具体例
優良企業だけれども株価が割安な銘柄の例として、幼児活動研究会の例を示します。幼児活動研究会は幼児向けに体育指導の事業を行っている会社であり、同じ保育業界の優良企業であるJPホールディングスと比較しながら、狙い目な優良企業と考える理由を解説します。
幼児活動研究会の業績
幼児活動研究会の売上・営業利益は下図のように、長期的に増加しています。
一方、JPホールディングスの業績は下図のようになっています。
JPホールディングスの売上は急成長しています。営業利益は2017年に一時下がりましたが(保育士の待遇改善などのため)、他の年は基本的に増加傾向です。
幼児活動研究会の売上高や営業利益額、および成長率はJPホールディングスに及びませんが、長期的に安定して増加しており、今後も着実に成長していくだろうと期待できます。売上高や利益の点では両社とも優良企業といってよいでしょう。
幼児活動研究会の株価の割安度
一方、割安さの指標であるPER、PBRを比べてみましょう(PER、PBRはともに小さいほど割安なことを表す指標です)。
2018年5月の幼児活動研究会のPER=14.7倍、PBR=1.68倍でした。JPホールディングスのPER=34倍、PBR=4.0倍に比べて明らかに割安です。
JPホールディングスも幼児活動研究会も業績の点ではどちらも優良銘柄ですが、幼児活動研究会のほうが株価は割安です。投資で利益を出すには、幼児活動研究会のほうが可能性は高そうです。
実際に投資した結果
実際、私が幼児活動研究会に投資したのは2016年5月です。その頃の株価は1株あたり1130円でした(その後、株式分割で1株が2株になりましたので、実質的な買付価格は565円です)。
購入したのちは、四半期ごとに決算報告書を見ていったところ、期待通り順調に業績が拡大していくとともに株価も上昇していきました。
2年後の2018年8月に利益確定のために売却したときの株価は886円でした。
以下が実際の取引履歴です。
最初に100株(株式分割のため、実質的に200株)を11.3万円で購入し、約2年間の保有後に約17.7万円で売却しています。この間、2回の配当を受けて、合計0.35万円も得ています。
つまり、約2年間の保有で約60%の利益を得られました。
幼児活動研究会の例のように、中小型企業の中には、好業績なのに割安に放置されている銘柄があります。このような銘柄は、いずれ価格が修正されますので、先回りして買っておくと、大きな利益が得られます。
投資の観点でいえば、本当の狙い目銘柄とは「好業績だけど割安な中小企業」です。
まとめ
本記事では、なぜ優良銘柄に長期投資するだけでは儲からないのか、株式投資における本当の優良銘柄を探すコツについて紹介しました。
優良企業を見つけるのは誰でもできますが、株式投資で成功するには優良企業であるだけでなく、株価が割安な銘柄を探すことが大事です。特に、ニッチな領域で高収益の事業をしているのに、知名度がなくて株価が割安な中小型企業が狙い目です。
短期的な株価は需要と供給で決まるので、割安株に投資したからといって、すぐに利益が得られるとは限りません。しかし、株価は長期的には本来の企業価値に連動するものなので、長期投資のスタンスで割安株に投資すれば成功する可能性は高くなります。
割安株による長期投資では合理的に投資判断できる部分が大きいので、これから投資を始めたいという投資初心者にもおすすめです。
長期投資に興味があるなら、まずは少額から割安株投資を始めてみることをおすすめします。