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銘柄の選び方

株式投資で便利な財務分析ツール3選。特徴の比較と使い分け方について紹介

この記事ではこのような疑問にお答えします。

  • 「企業分析で決算データを調べるのが大変。決算書を簡単に分析できるツールはないだろうか?」
  • 「いろんな企業分析ツールがあるけど、その違いは何?どう使い分ければいい?」

株式投資では、企業の戦略性などに注目が集まりやすいです。しかし、それと並んで大事なのが、企業の財務分析(簡単にいうと、決算書の分析)です。

財務データに基づいて客観的に定量分析することで、隠れた優良・割安株を探すことができます

とはいえ、財務分析で大事な項目はたくさんあります。深く分析しようとすると時間がかかってとても大変です。

財務分析をするときは手軽に使える分析ツールを使って、できるだけ効率化することをおすすめします。

本記事では私が主に使っている3つの財務分析ツールの特徴を比較し、私の使い分け方について紹介します。

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ファンダメンタルズ分析でおすすめのツール3選と、その特徴

私がいつも使っていて、おすすめの財務分析ツールは以下の3つです。

これらの特徴を簡単に比較すると、下表のようになります。

マネックス証券の銘柄スカウターGMOクリック証券の財務分析ツール会社四季報CD-ROM
強み 2007年以降の長期業績推移を閲覧できる
貸借対照表をグラフ化して閲覧できる
・企業価値による理論株価を診断できる
貸借対照表をグラフ化して閲覧できる
・詳細な財務データ(最大10年分)と、自分で作成した条件式を使って、独自のスクリーニングができる
弱みPERやPBRなどの簡単な割安度指標しかない業績を見られるのは最大10年分 業績を見られるのは最大10年分
・基本的に数値データが多い(グラフ化されていない)
おすすめの用途 長期業績で景気敏感かを調べる
・業績や一般的な投資指標を競合と比較する
・四半期業績を調べる
・貸借対照表で財務の安定度を調べる
理論株価で割安度をみる
独自の条件式を用いたスクリーニング
費用口座保有者は無料口座保有者は無料有料

それぞれにメリット・デメリットがありますので、用途に合わせて使い分けるとよいです。私の場合、3つのツールを以下の用途で使い分けながら、銘柄を絞り込んでいます。

  1. 会社四季報CD-ROMで大まかに優良・割安株を絞り込む
  2. マネックス証券 の銘柄スカウターで長期的な業績を調べる
  3. GMOクリック証券 の財務分析ツールを使って、財務の安定度や株価の割安さを調べる

それぞれのツールの特徴と使い方について、以下で解説します。

マネックス証券の銘柄スカウターは長期業績の分析が得意

マネックス証券 の銘柄スカウターはいろんな機能がありますが、たとえば、以下の機能が便利です。

  • 過去10期以上(2007年~)の長期的な業績を一括してグラフ表示できる
  • 企業のビジネスをセグメントごとに分解して表示できる
  • PERやPBR、配当利回りの推移を最長5年間グラフ表示
  • 競合企業の業績、投資指標を簡単に横並び比較できる

特に、便利だと感じているのは、2007年以降の長期業績をまとめて閲覧できることです。一方で、業績以外の点は弱い部分があるので、他のツールを併用するとよいです。

銘柄スカウターのデメリットは、簡単な割安度指標しか見られないこと

最初に、銘柄スカウターのデメリットについて述べておくと、PERやPBRなどの簡単な割安度指標しか見られないことです。

PERやPBRも参考になりますが、収益性と資産性を総合的に判断する場合は、企業価値評価手法のほうが便利です。

企業価値で割安度を判断するには、後述するGMOクリック証券 の財務分析ツールを活用するとよいです。

銘柄スカウターのメリットは、景気変動に対する敏感度がわかりやすいこと

一方、銘柄スカウターのメリットは、2007年以降の長期業績をまとめて閲覧できるため、景気変動に対して敏感かどうかを簡単に確認できる点です。

たとえば、日本を代表する大企業のトヨタとKDDI(auブランドの携帯事業の会社)の2007年以降の売上高・営業利益を比較すると、以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。

トヨタの売上高・営業利益

トヨタの売上高・営業利益

KDDIの売上高・営業利益

KDDIの売上高・営業利益

  • 売上高:右軸
  • 営業利益:左軸(0からのスタートではないことに注意してください)

トヨタはリーマンショック直後の2009年に4700億円の営業赤字に陥っており、景気変動の影響を大きく受けていたことがわかります。自動車は耐久消費財であるため、景気が低迷しているときは買い控えが発生しやすいからです。

一方、KDDIの業績はリーマンショック直後でもほとんど横ばいで、明確な悪化はしていないことがわかります。KDDIの通信事業は毎月継続的な支払いが見込めるビジネスモデルであるため、解約が大量に発生しない限りは業績が変動しにくいからです。

したがって、次に〇〇ショックが発生して不況に陥った場合、トヨタの業績は大きく悪化する可能性がある一方、KDDIの業績はあまり影響を受けにくいだろうと予想できます。

このように、長期業績を見ると、景気敏感株かどうかを簡単に判断できるというのが、マネックス証券 の銘柄スカウターのメリットです。

もちろん、リーマンショック以降にビジネスモデルが変化している場合もありますので、過去の業績はあくまでも目安に過ぎません。実際は、個々の企業を詳しく調査する必要があります。

銘柄スカウターは損益計算書(売上高や利益など)の分析に使うとよい

そのほかにも、銘柄スカウターは売上高や利益などの業績に関する項目が豊富です。ツイッター上でも銘柄スカウターの評判は良いです。

例えば、勤務医でありつつ、5億円を投資しているすご腕の投資家、インヴェスドクターさんも以下のように言っています。

実際、銘柄スカウターは四半期業績やPER、PBRの過去推移、業績計画と実績値の比較などの機能が使いやすく、銘柄分析が楽になったと私も実感しています。

マネックス証券 の銘柄スカウターは業績などの分析に活用するとよいです。

もともと銘柄スカウターは貸借対照表(BS、バランスシート)の分析ができないのが弱点でしたが、2020年6月のバージョンアップで貸借対照表の分析もできるようになりました!

銘柄スカウターでは最大10期分の貸借対照表の推移を簡単にグラフ化できるほか、項目別の推移のほか、変動要因の分析にも対応しています。

銘柄スカウターを使えば、売掛債務や棚卸資産(在庫)が増えていないか、のれんなどの無形固定資産は大きくないかなどを簡単にチェックできますので、便利です。

公式ページはこちら⇒ マネックス証券

GMOクリック証券の財務分析ツールは貸借対照表の分析に便利

GMOクリック証券 の財務分析ツールは以下の4つの機能があります。

  1. 株価分析機能:企業価値評価手法を用いて理論株価を算出し、実際の株価と比較したときの割安度を診断する
  2. 経営分析機能:バリューチェーン分析と経営効率分析により、企業の経営状況に問題点が無いかを診断する
  3. 財務諸表分析機能:最大10年分の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の変化から経営状況をチェックする
  4. シミュレータ機能:将来の業績成長を加味した株価分析(理論株価による割安度診断)をする

特におすすめなのは1,3の機能です。一方で、他のツールに及ばない部分もあります。以下で簡単に解説します。

GMOクリック証券の財務分析ツールのデメリットは、最大10年分の業績しか見られないこと

最初に、GMOクリック証券の財務分析ツールのデメリットについて述べると、最大10年分の業績しか見られないことです。そのため、リーマンショック前後での業績変化がどうだったのかはわかりません。

景気敏感銘柄の中には、10年前から増収増益を繰り返していて成長銘柄に見えるものもあります。しかし、実はリーマンショックで大きく落ち込んだ分を取り戻したという要素が大きい場合もありますので、注意が必要です。

景気変動の影響を見たい場合、前述のマネックス証券 の銘柄スカウター(2007年以降の業績をすべて見られる)を使うとよいです。

貸借対照表をグラフ化して表示してくれるので、財務的な問題が無いかを確認しやすい(機能3)

一方、GMOクリック証券の財務分析ツールのメリットの一つは、貸借対照表を分析しやすいことです。

貸借対照表(バランスシート)は財務三表のひとつで、企業が保有する資産と負債、その差額である純資産の内訳を示した表のことです。

貸借対照表は数字が並んでいて、とっつきにくく感じるかもしれませんが、企業の財務体質を見るのにとても大事なものです。

GMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、グラフ化された貸借対照表を見ることができます。大小関係がわかりやすいので、財務体質の良さを簡単に理解することができて便利です。

貸借対照表の活用方法の具体例

例えば、ある業界における競合2社の貸借対照表を以下に示します(引用:GMOクリック証券の財務分析ツール)。

A社の貸借対照表

A社の貸借対照表

B社の貸借対照表

B社の貸借対照表

A社の貸借対照表は現預金が圧倒的に多く、負債はわずかしかありません。当面、資金繰りに困ることは考えにくいので、比較的安心して長期投資できます。

一方、B社は有利子負債や買入債務が多いです。ある程度の現預金は確保しているので、当面の資金繰りは問題なさそうですが、無形固定資産(主にのれん)が多いため、実質的な資産は豊富とはいえません。B社は業績が改善しない限り、やや苦しい状況が続きそうです。

GMOクリック証券 の財務分析ツールを使えば、上記のような財務の良好さを簡単に判断できますので、銘柄選びに便利です。

理論株価診断機能があるので、株価の割安度がわかりやすい(機能1)

さらに、GMOクリック証券 の財務分析ツールのもう一つのメリットは、理論株価を用いて割安度を手軽に診断できる点です。

たとえば、大手通信会社のKDDIの理論株価(株主価値)は以下のようになっています(GMOクリック証券の財務分析ツール)。

KDDIの理論株価

KDDIの理論株価

KDDIは自己資本が豊富ですが、固定資産が多いため、財産価値(資産の種類で重みづけした場合の保有資産価値)は少ないです。一方、KDDIは業績が好調で、利益率が高いため、事業価値が高いという強みを持っています。

その結果、事業価値と財産価値の合計から有利子負債を引いて求める理論株価は3304円となっていて、実際の株価2943円(2019/10/25終値)はやや割安気味のフェアバリュー(適正株価)となっています。

このようにして、株価の割安さを簡単に診断できるので、GMOクリック証券 の財務分析ツールは便利です。

理論株価なんてあてになるのかと疑問に思う方もいるかもしれません。

しかし、著名投資家ウォーレン・バフェットの師匠であり、バリュー投資の父と呼ばれる、ベンジャミン・グレアムは次のように言っています。

短期的にみると、株式市場は人気投票装置である。しかし、長期的にみれば、価値計測装置である。

つまり、短期的な株価は需給に左右されるが、長期的な株価は企業価値で決まるという意味です。
※企業価値を1株あたりに換算したものが理論株価です。つまり、長期的な株価は理論株価で決まると言い換えられます。

実際、グレアムやバフェットは企業価値を基準としたバリュー投資で成功しており、長期的に高いパフォーマンスを示している投資家はバリュー投資家が多いといわれます。

企業価値を基にした投資方法について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
理論株価(適正株価)の計算式と使い方の注意点。おすすめは企業価値評価手法

四季報CD-ROMは独自の条件式を用いたスクリーニングが可能

会社四季報CD-ROMは、株式投資のバイブルとして有名な会社四季報をPCで見られるようにしたソフトウェアです。会社四季報の全データが収録されていますので、見たい企業を簡単に検索して閲覧できます。

さらに、会社四季報CD-ROMの一番のメリットは、豊富な財務データを使って、任意の条件式でスクリーニングできることです。四季報CD-ROMを活用することで、優良な割安株を短時間で探すことができます。

一般的なスクリーニングツールとの違い

一般的なスクリーニングツールと、四季報CD-ROMのスクリーニング機能の違いをまとめると、以下のようになります。

一般的なスクリーニングツール会社四季報CD-ROMのスクリーニング機能
費用無料で使えるものも多い有料
条件式予め用意された条件式のみ自分で自由に条件式を作成できる
検索対象のデータ最新のデータが中心で、少ない最大10年分の財務データを使って検索可能

会社四季報CD-ROMのデメリットは、有料で高いこと

最初に、会社四季報CD-ROMの最大のデメリットは何かというと、有料で高いことです。年間の定期購読をすれば割引になりますが、それでも高いです(年間の定期購読で23,000円/年)。

スクリーニング機能をある程度使いこなせれば、値段以上の価値はあると思いますが、まだ投資基準があまり明確になっていない場合はその価値を感じにくくてもったいないかもしれません。

まずは、口座開設すれば無料で使えるマネックス証券 の銘柄スカウターやGMOクリック証券 の財務分析ツールを使って、自分なりの投資基準を作ってから、会社四季報CD-ROMを試してみることをおすすめします。

会社四季報CD-ROMのメリットは、強力なスクリーニング機能

一方、会社四季報CD-ROMの最大のメリットは、自分で作成した条件式と、最大10年分の財務データを使って検索できるという強力な機能にあります。

自分で条件式を設定しないといけないという手間はありますが、一般的なスクリーニングツールでは探せないような、隠れた優良・割安株を簡単に見つけられるので、便利です。

もちろん作成した条件式は保存できますので、繰り返し使えます。

独自の条件式を作成して、スクリーニングする方法の例

たとえば、一般的なスクリーニングツールにはあまりないけど、実は重要な指標として、営業キャッシュフローマージンがあります。営業キャッシュフローマージンは、以下の式で計算されます。

営業キャッシュフローマージン[%] = 営業キャッシュフロー/売上高×100

つまり、営業キャッシュフローマージンとは、売上高営業利益率の分子(営業利益)を営業キャッシュフローに置き換えた指標のことです。

なぜ営業キャッシュフローマージンが大事なのか?

「利益は意見、キャッシュフローは事実」といわれるように、利益は合法的な範囲内でごまかしがききやすい数字です。したがって、利益だけで判断していると失敗する場合があります。

たとえば、大幅な増収・増益を続けているけど、実は棚卸資産(在庫)も急速に増えているような企業です。うまくいっている間は良いですが、景気が悪くなった途端に大赤字を出したり、資金がショートして倒産したりする可能性があります。

一方、営業キャッシュフローは現金収支そのものを表していて、ごまかしがききにくい数字です。そのため、営業キャッシュフローをみれば、企業の実態が浮き彫りになります

そのため、営業利益率よりも営業キャッシュフローマージンを重視しているという投資家は意外と多いです。

例えば、四季報CD-ROMでは、以下のようにスクリーニング条件式を入力します。

営業キャッシュフローマージンによるスクリーニング条件式の設定

営業キャッシュフローマージンによるスクリーニング条件式の設定

営業キャッシュフローマージンの目安として、15%以上と設定しました。この条件式を用いて、スクリーニングした結果の例が以下です(営業キャッシュフローマージン以外のスクリーニング条件も複数設定しています)。

営業キャッシュフローマージンによるスクリーニング結果の例

営業キャッシュフローマージンによるスクリーニング結果の例

優良企業として有名なKDDIやNTTドコモなどを検索できていますね。他の企業も比較的業績がよい企業が多いです。

このようなスクリーニング条件を複数組み合わせて検索するだけで、質の高い優良企業をある程度絞り込むことができます。上場企業約3700社の四季報をすべて調べる手間と比べると、圧倒的に簡単です。

会社四季報CD-ROMは毎日仕事や家事で忙しい投資家の方にとって便利です。

もちろんスクリーニングだけで優良企業を選定できるわけではありません。絞り込まれた銘柄の中から真の優良企業を選ぶ作業が必要です。

スクリーニングに使用可能な財務データ

会社四季報CD-ROMで使用可能な財務データは多岐に渡ります。詳しくは、以下の公式ホームページをどうぞ。
『会社四季報CD-ROM』の10大特徴 詳細画面で本の四季報よりさらに詳しい情報をチェック

まとめ

本記事では株式投資でおすすめな財務分析ツール3選の特徴を比較し、どういう使い分け方が良いかについて紹介しました。

最後にもう一度、3つのツールの特徴と、私の使い方についてまとめた表を示します。

マネックス証券の銘柄スカウターGMOクリック証券の財務分析ツール会社四季報CD-ROM
強み 2007年以降の長期業績推移を閲覧できる
貸借対照表をグラフ化して閲覧できる
・企業価値による理論株価を診断できる
貸借対照表をグラフ化して閲覧できる
・詳細な財務データ(最大10年分)と、自分で作成した条件式を使って、独自のスクリーニングができる
弱みPERやPBRなどの簡単な割安度指標しかない業績を見られるのは最大10年分 業績を見られるのは最大10年分
・基本的に数値データが多い(グラフ化されていない)
おすすめの用途 長期業績で景気敏感かを調べる
・業績や一般的な投資指標を競合と比較する
・四半期業績を調べる
・貸借対照表で財務の安定度を調べる
理論株価で割安度をみる
独自の条件式を用いたスクリーニング
費用口座保有者は無料口座保有者は無料有料

それぞれにメリット・デメリットがあるので、上手に使い分けるとよいです。

中でも、会社四季報CD-ROMはとても強力なツールですが、有料で高いのがデメリットです。自分なりの投資基準が明確になっていない場合は、有効活用するのが難しくてもったいないかもしれません。

まずは無料で使えるマネックス証券 の銘柄スカウター、GMOクリック証券 の財務分析ツールを使って、どういう銘柄が優良、割安かという自分なりの投資基準を作っておくとよいです。

ある程度、自分の投資基準が明確になってきて、隠れた優良銘柄探しを効率的にやりたくなったところで、会社四季報CD-ROMのスクリーニング機能を使ってみるとよいです。圧倒的な便利さに感動すると思います。

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