- 「ネット証券に興味があるけど、証券会社自体が倒産してしまわないか心配」
- 「証券会社がつぶれたら、自分の大切な資金はどうなるのだろうか?」
また、破綻のリスクを考えると、大手以外の証券会社は危ないのではないかと思っている方もおられるのではないでしょうか?
しかし、実際は中小の証券会社を使っていても過度に心配する必要はありません。なぜなら、日本には証券会社が破綻しても投資家を保護する2重の仕組みがあるため、自分の資金がゼロになることはないからです。
したがって、証券会社を選ぶ際は、破綻のリスクを過度に恐れる必要はなく、取引の選択肢の多さや各種サービスの充実度で選ぶとよいです。
とはいえ、実際に証券会社が破綻した場合は多少の不都合が生じる場合もあります。ある程度の運用額になったら複数の証券会社に分散しておくことをおすすめします。
本記事では、証券会社が破綻しても投資家の資産が保護される仕組みと、その注意点・対策について紹介します。
証券会社が倒産した時の投資家保護の仕組み
証券会社が破綻したときに投資家を保護するための仕組みとして、以下の2つがあります。
- 法律(金融商品取引法)によって「投資家の資産を証券会社の資産と分別して管理する」ことが決められている(分別管理)
- 万が一、破綻した証券会社が分別管理していなかったとしても、1000万円までは日本投資者保護基金が補償する
1番目の分別管理を徹底することによって基本的に投資家の資産は保全されています。しかし、決まりを破って分別管理していない証券会社が破綻した場合に備えて2番目の補償が用意されています。
つまり、2重のセーフティネット(安全網)で守られているため、私たち個人投資家は安心して投資できるというわけです。
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
投資家の資産は、証券会社の資産と分別管理されている
最初に分別管理の仕組みについてです。たとえば、証券会社における預り金の分別管理方法は以下のようになっています。
預り金は証券会社の金銭と区別して、信託銀行の中で管理されています。証券会社が顧客の預かり金を勝手に使うということはできません。
一方、上場株式の分別管理方法は以下のようになっています。
顧客資産の上場株式は、証券会社が保有する株式と区別して証券保管振替機構(ほふり)の中で保管されています。顧客ごとの保有株数は帳簿により判別できるようになっています。
上記のような仕組みでどの証券会社も運用されています。顧客の資産が証券会社の資産と混同されることはないため、もし証券会社が破綻したとしても投資家の資産が証券会社の返済に充てられるという心配はいりません。
もし証券会社が破綻した場合は、他の証券会社に資産を移管して運用を継続することができます。顧客資産は証券会社の破綻に関係ありませんので心配はいりません。
顧客資産の分別管理を徹底させるための仕組み
一方、「分別管理の決まりがあったとしても、守っていなければ意味がないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
確かにその通りですが、実際は違反を厳しく取り締まる仕組みがありますので、過度に不安に感じる必要はありません。
たとえば、証券会社は定期的に金融庁の検査や日本証券業協会の監査を受けており、もし分別管理を適正に行えていない場合、以下の厳しい処罰を受けることが法律で定められています。
- 会社は6か月以内の業務停止処分、3億円以下の罰金
- 代表者・従業員は2年以下の懲役または300万円以下の罰金
さらに、違反をしていたことが公表されれば顧客が逃げ出してしまい、事業を継続できなくなることも予想されます。したがって、上記の罰則は分別管理を怠らないための強力な抑止力になります。
1000万円までは投資者保護基金によって補償される
分別管理の仕組みがあるので投資家の資産は基本的に保全されていますが、さらに投資家を保護する仕組みがあります。それが投資者保護基金による補償です。
国内で有価証券の売買等を行う証券会社はすべて日本投資者保護基金に加入することが金融商品取引法で義務付けられています。
もし分別管理がされていなかった場合や、預かった資金を分別管理するまでの一時的な時間差によって資金を返還できなくなった場合などでも、預り資産のうち1000万円まで(1人あたり)は日本投資者保護基金で補償されます。
実際、過去には以下の2証券会社が破綻した際に、日本投資者保護基金による補償が行われたことがあります。
補償実績
平成10年12月1日の設立以降、顧客に対する補償を行った実績は、以下の2件となっています。
- 南証券(本社:群馬県) 補償金額約35億円※(2000年度)
(※当時は、1000万円の上限額がありませんでした。)- 丸大証券(本社:東京都) 補償金額約1億72百万円(2012年度)
2件とも経営者が顧客資産を不正に流用したようですが、このような場合でも日本投資者保護基金が補償してくれます。
2重のセーフティネットで投資家の資産を保護する仕組みがありますので、私たち個人投資家は安心して投資できます。
証券会社がつぶれた時の注意点
投資家の資産は2つのセーフティネット(分別管理と投資者保護基金)によって基本的に保護されています。しかし、実際に証券会社が破綻した場合、全くリスクがないというわけではありません。以下の2点に注意が必要です。
- 証券会社1社あたり1000万円以上は補償されない
- 証券会社の破綻から資産を移管するまで、一時的に売買ができなくなる
上記2つの注意点について、以下で詳しく解説します。
証券会社1社あたり1000万円以上は補償されない
もし破綻した証券会社で分別管理がされていなかった場合は投資者保護基金が補償しますが、1社あたりの上限額は1000万円です。もし1000万円以上の資産を運用している場合は損失を受けてしまいます。
1000万円というのは相当な金額ですから、損失を負う可能性のある個人投資家はごくわずかだと思います。しかし、運用歴が長くなって、運用額が1000万円を超えそうになってきた場合は気をつけないといけません。
証券会社の破綻から資産移管が完了するまで、一時的に売買ができなくなる
証券会社が破綻してから他の証券会社に資産移管するまでは一時的に売買ができなくなります。
もし証券会社が破綻したときに経済が混乱して評価額が大幅下落した場合、実質的な損失を生む可能性があります。
投資家保護の仕組みにより資産自体は保護されているとはいえ、一時的に売買ができなくなるリスクがあることには気をつけないといけません。
証券会社の破産のリスクを回避する方法
証券会社の破綻のリスクを回避するには、以下の2つが大事です。
- 証券会社1社あたりの運用額は1000万円以下にする
- 運用資産は複数の証券会社に分散する
以下で詳しく解説します。
1社あたりの運用額は1000万円以下に抑える
最も大事なのは証券会社1社あたりの運用額を1000万円以下に抑えることです。1000万円以下で運用していれば、もし証券会社が破綻したとしても全額が補償されますので安心して投資できます。
もし運用額が1000万円を超えそうになった場合は、複数の証券会社に分けて管理するとよいです。
資産を複数の証券会社に分散する
もし証券会社が破綻した場合は、資産移管が完了するまで売買ができなくなります。このリスクを減らすには、資産額1000万円以下であっても証券会社を分散するとよいです。
1社が破綻する可能性と比べれば、すべての証券会社が同時に破綻する可能性のほうが間違いなく少ないです。少なくとも一部の資産は売買できますので、もしもの時も安心です。
また、証券会社を分散する場合、以下のようなメリットもあります。
- 取引の種類に応じて、お得な証券会社を選べる
- 各社の投資情報やツールを使える
複数の証券会社を使うと管理の手間が増えますが、それよりも上記のメリットのほうが大きいです。証券会社破綻のリスクも軽減できますので、複数の証券会社に分散して投資することをおすすめします。
まとめ
本記事では、証券会社が破綻した際に投資家の資産を保護する仕組みと、その注意点・対策について紹介しました。
上記のような投資家を保護する仕組みがありますので、どの証券会社を選んでも突然資産がゼロになるというリスクはありません。中小の証券会社だからといって過度に避ける必要はありません。
むしろ中小の証券会社の中には独自のサービスを行っていて、大手よりもお得で便利な場合もあります。役立ちそうな証券会社があれば積極的に活用していくことをおすすめします。