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投資の基本

長期投資の分散投資手法(資産・時間分散)と集中投資を避けるべき理由

この記事ではこのような疑問にお答えします。

  • 「投資の基本は長期分散投資だというし、たくさんの銘柄を持つほどいいのだろうか?」
  • 「リスクをとって集中投資すべきだという投資本もあるけど、結局どちらがいいのだろうか?」

株式投資の入門書をみると、必ずといっていいほど分散投資するべきと書かれています。投資先をできるだけたくさん分散するほうがよい結果につながると思っている方も多いでしょう。

一方、長期投資で大富豪となって世界中から称賛されている、ウォーレン・バフェットは意外にも集中投資家です。有名な投資マンガ「インベスターZ」の中でもバフェットの集中投資家ぶりが紹介されており、投資家はリスクをとるべきだと主張されています。

また、バフェットに影響を与えたといわれる大投資家のフィリップ・フィッシャーも分散しすぎはよくないと言っています。

彼らの投資法などから、リスクをとって集中投資すべきと感じる方も多いかもしれません。

とはいえ、プロの卓越した投資家が集中投資をすすめるのには確固とした理由があります。前提条件を理解せずに集中投資を行うと大失敗につながりかねません。

プロ投資家が集中投資をすすめる理由を理解すると、私たち個人投資家はむしろ分散投資が適している場合が多いことがわかります。

本記事では「投資初心者やプロ以外の投資家におすすめな分散投資の手法と、集中投資ではなく、分散投資をすべき理由」について紹介します。

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おすすめな分散投資手法

分散投資をする場合、以下の2つの観点で分散するとよいです。

  1. 資産(銘柄)の分散
  2. 時間の分散(ドルコスト平均法)

これらのポイントについて、以下で解説します。

資産(銘柄)の分散

1つ目のポイントは、資産(銘柄)の分散です。

投資の世界では「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。複数のカゴに卵を入れておけば一つのカゴを落としても他の卵は無事であるという意味です。

値動きに相関がない(連動しない)ものを組み合わせるほど、分散効果が高まります。投資で大失敗を避けるには、複数の資産(銘柄)を組み合わせて投資すべきです。

分散という観点では、以下の3つに注目して分散するとよいです。

  1. アセットクラス(資産クラス)
  2. 投資地域
  3. 通貨

上記の観点について、以下で解説していきます。

1.アセットクラス(資産クラス)の分散

代表的なアセットクラス(資産クラス)として、以下の5つがあります。それぞれで値動きの特徴が異なるため、組み合わせることで分散効果があります。

  • 株式
  • 債券(国債や社債など)
  • 不動産(REITなど)
  • 現物資産(金や銀、原油など)
  • 現預金

たとえば、代表的な資産(投資地域の違いも含む)の年次リターンランキングを見てみましょう。

代表的な資産の年次リターンランキング

代表的な資産の年次リターンランキング(SMBC日興証券HPより引用)

各年でリターンランキングが激しく入れ替わっており、常に優位な資産クラスはないことがわかります。どの資産の成績が良いかを事前に予測することはできず、どれかの資産に偏って保有していると値動きが激しくなってしまいます。

一方、国内株式、国際株式、国内債券、海外債券に分散投資した場合の成績(赤枠)はおおよそ中間に位置しています。年によるばらつきが小さいため、安定した運用ができます。これが分散投資の効果です。

もし個別株に長期投資する場合は、もっと値動きが激しいと考えたほうがよいです。できれば10社以上に分散して投資するのがよいです。たとえ1社の株価が半分に暴落したとしても、損失額は約5%で済む計算になりますので、比較的安定した運用が可能です。

2.投資地域の分散

投資対象国や地域によって固有の政治・経済情勢が異なるため、値動きに大きく影響してきます。投資地域は大きく分けると以下の3つに分類されることが多いです。

  • 日本
  • 海外先進国(米国、欧州など)
  • 新興国(中国、インド、ブラジル、ロシアなど)

日本や海外先進国は経済成長率は低めですが、経済規模が大きいため、値動きが比較的安定しています。一方、新興国は経済成長率が平均的に高くて長い目でみれば将来性が見込めますが、経済規模が小さく、値動きが激しいという特徴があります。

例えば、2000年代は新興国の成長が著しく、株価も急上昇しました。しかし、2010年代はアメリカの利上げなどの影響で新興国から資金が流出し、チャイナショックやトルコショックなどが起き、経済が不安定になっています。

新興国は将来性が大きいものの、値動きが不安定なので、メインの投資先としてはおすすめできません。ある程度の経済成長と安定性が期待できる米国を中心としつつ、一部を日本などの先進国、および新興国に分散投資するのがおすすめです。

3.通貨の分散

通貨の分散も重要です。例えば、米国株に投資する場合、ドルで運用することになります。

もしドルで運用していた場合に、円安ドル高になると日本円で換算したときの資産価値が上がります。アベノミクスで1ドル80円が120円くらいになったときにドル建て資産を持っていた方はそれだけで評価額が1.5倍になったという方も多いです。

ただし、円高ドル安になると日本円での価値が減少します。ドル建て資産を持つことで為替変動リスクを負うことになりますので、メリット・デメリットがあります。

では、なぜ為替変動リスクがあっても、通貨の分散をするといいのでしょうか?

通貨を分散する最大のメリットは、日本円の信用リスクを避けられることです。

日本円の信用リスクと聞いてもピンとこないかもしれません。しかし、日本の公的な債務残高(対GDP比)は下図のように、先進国の中でとびぬけて最悪です。

日本など主要先進国の債務残高

日本など主要先進国の債務残高(引用:財務省ホームページ)

財政危機で世界的な大問題になったギリシャの債務残高(2017年)はGDP比で約180%です。実はギリシャよりも日本のほうが危機的な財務状況なのです。

もし将来、日本円の信用が失われ、極端な円安が進行した場合、輸入品の価格が急上昇し、インフレが進行する可能性があります。

このとき、ドルなどの外貨で資産を持っていれば、その資産価値が相対的に上がります。その結果、円安による影響を抑えることができます。

通貨分散の観点から、海外資産に分散投資しておくことをおすすめします。

個別株投資で分散投資するなら単元未満株がおすすめです。

通常、個別株は1単元(100株)ごとの売買なので、分散投資するにはそれなりの資金が必要です。しかし、単元未満株なら1株から売買できます。

少額から分散投資できるので、リスク小さく始められて便利です。

時間の分散(投資タイミングの分散)

2つ目のポイントは、時間的な分散(投資タイミングの分散)です。

十分な企業分析をして、優良銘柄を見つけた場合、早く投資しなければチャンスがなくなってしまうのではないかと思って気が焦ります。しかし、投資した後で業績が悪化したり、突然の経済ショックで株価が下がったりすることがよくあります。

どんなにいい銘柄であっても、一度にまとめて大きな金額を投資するのはリスクが大きいです。

投資タイミングによる後悔を避けるには、毎月とか数ヶ月ごとに分散して投資するのがよいです。株価上昇に乗り遅れることもありますが、逆に失敗して後悔することも減ります。

少なくとも銘柄分析力が向上して自信がつくまでは、リスクを避ける意味で投資タイミングを分散するほうが良いです。

ドルコスト平均法

特に、複数回に分けて一定額ずつ投資する方法をドルコスト平均法といいます。一定額ずつ買うので、割安なときに多く買い、割高なときには少なく買うことができます。その結果、平均購入単価を下げることができ、投資のリターンが上がりやすくなります。

イメージしやすいように、投資信託の毎月定額買付の例で説明します。ある投資信託Aに、12万円を投資するとします。投資のタイミングとして、以下の2パターンで投資したとします。

  1. 最初の月に12万円買う
  2. 毎月1万円ずつ、12か月かけて買う

投資信託Aが以下の値動きをした場合、1年後の利益はどちらが多いかというと、2の「毎月1万円ずつ買う」です。

投資信託Aの価格推移チャート

投資信託Aの価格推移チャート

実際に計算してみると、元手12万円が1年後に、1は13.2万円(+10%)、2は約13.8万円(約+15%)になります。

なぜ約5%もの差がつくのでしょうか?

その理由は、毎月一定額ずつ買うため、高いときに買う量は少なく、安いときに買う量は多くなるからです。

投資信託Aの価格推移チャート&購入数量

投資信託Aの価格推移チャート&購入数量

このように、毎月一定額ずつ買うことで平均購入単価を下げられることがドルコスト平均法のメリットです。

長期投資を始めるにあたって、手軽に資産の分散と時間的な分散ができる金融商品が投資信託(ETF:上場投資信託を含む)です。

おすすめな投資信託・ETFの選び方のポイントについては以下の記事にまとめてあります。
詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。
長期投資におすすめな投信(インデックスファンド・ETF)の選び方のポイント

投資初心者やプロ以外の投資家が分散投資をすべき理由

一方、バフェットやフィッシャーなどのプロ投資家は分散投資よりも集中投資すべきといいます。実際、バフェットがどれほどの集中投資家なのかを見てみましょう。

たとえば、2018年3月のポートフォリオ(保有銘柄)をみると、以下のようになっています。

銘柄名ティッカー比率
アップルAAPL21.27%
ウェルズ・ファーゴWFC12.66%
バンク・オブ・アメリカBAC10.78%
クラフト・ハインツKHC10.74%
コカ・コーラKO9.19%
アメリカン・エクスプレスAXP7.48%
その他27.88%
バフェットのポートフォリオ(比率)

バフェットのポートフォリオ(比率)

バフェットのポートフォリオの時価総額は1900億ドル(約21兆円)近くあるのにかかわらず、上位6銘柄だけで約72%を占めています。1位のアップル株だけで約400億ドル(4.4兆円)も保有しています。

通常は運用資産が巨大になるほど銘柄数が増えるのが普通です。たとえば、日本のアクティブ型投資信託で純資産額がトップクラスのひふみプラス(純資産総額約8000億円)は、組み入れ比率トップのAmazon株でも約2.3%です(2018年8月度)。上位10銘柄を合計しても約18.4%しかありません。

バフェットの運用資産は巨額である一方、かなりの集中投資をしていることがわかります。

ウォーレン・バフェットが集中投資をする理由

バフェットは堅実な長期投資家のイメージがありますので、これほどの集中投資をしていることを意外に感じるかもしれません。なぜバフェットは分散投資をしないのでしょうか?

その答えは、以下のバフェットの発言から読み取れます。

  • 「分散投資は無知に対するリスクヘッジ(回避)だ。自分で何をやっているかわかっているものにとって、分散投資はほとんど意味がない」
  • 「リスクとは、自分が何をやっているかよくわからない時に起こるものです」

つまり、バフェットは「投資先企業の将来像がわかっているなら分散投資する必要はなく、逆に分散投資するのは自分の分析不足を埋め合わせているだけだ」と考えているのです。

実際、バフェットは企業の財務状態や業績、ビジネスモデルを調べ尽くして、投資先の将来について確信を持てた場合のみでないと投資しないことは有名です。

一方、分散投資の目的は、将来の状況がどうなるかわからないことを前提として、何があっても致命的なダメージを避けることです。もし将来の状況がわかるのであれば、分散投資せずに、最もリターンの高い銘柄に集中投資するほうがよいのは間違いありません。

バフェットが集中投資すべきと言うのは、企業の将来予測に自信があるからなのです。

投資判断に絶対の自信を持てなければ分散投資が良い

一方、私たち個人投資家はバフェットを見習って、良いと思った銘柄のみに集中投資するべきなのでしょうか?

確かに、集中投資したほうがよい人もいるかもしれません。しかし、バフェットのような徹底した企業分析ができて、卓越した銘柄選別眼を持つ人がどれほどいるでしょうか。

ある程度投資の勉強をして「自分は投資に対して無知ではない」と思っていたとしても、実際にやってみると思うようにいかないことが多いです。見落としていた弱点が後からわかって失敗することが多々あります。

忘れてはいけないのが、株式市場では初心者もプロも同じ土俵の上で勝負しているということです。自分は無知ではないと思ったとしても、歴戦のプロと比べたら私たち個人投資家は無知であると考えておいたほうがよいと思います。

したがって、思いもよらない失敗を避けるためには、「無知な自分は分散投資でリスクヘッジするほうがよい」と考えるほうが賢明です。

投資の基礎知識についてのおすすめ記事はこちら:
株・投資信託の初心者におすすめな長期投資戦略のまとめ。損しないための始め方
長期投資を始めたいというあなたへ。当記事では「投資初心者が知っておくとよい投資の基礎知識と投資戦略、投資初心者におすすめな証券会社」についてまとめました。これを読めば長期投資に必要な考え方がわかります。どうぞご覧ください。

まとめ

本記事では、長期投資における分散投資の方法と、投資初心者やプロ以外の投資家が集中投資すべきでない理由について紹介しました。投資は難しいと思って、そもそもやらないほうが良いのではないかと思ったかもしれません。

しかし、日本やアメリカなどの株式市場平均を見ると、長期的に5~9%くらいの利回りが期待できることが過去のデータからわかっています。平均値で5~9%ですから、業績がよくて割安な銘柄を探せばそれ以上のリターンを得られる可能性もあります。

もちろん失敗する可能性もありますが、分散投資でリスクヘッジしておけば大きな失敗は避けられます。小さな失敗を繰り返しながら、銘柄分析力を向上していけばよいのです。

さらに、銘柄分析の時間がないという場合は、市場平均そのものに投資するインデックス型投資信託やETFという手段もあります。そこそこのリターンでよければ誰でも投資で成功することは可能です。

投資で資産を増やしたいと考えている方は、まずは少額から始めて、経験を積みながら勉強していくことがオススメです。

少額から投資したいなら、単元未満株を使うのもおすすめです。単元未満株なら1株から売買できますので、通常の単元株取引(100株単位)よりぐっと投資しやすくなります。

私の場合、SBIネオモバイル証券を使って、1~3株くらいずつ定期的に積立投資しています。SBIネオモバイル証券を使えば、格安な手数料で1株ずつ売買できるので、リスク小さく始められて便利です。

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