- 「出光興産に興味があるけど、業績や財務はどうなのだろうか?」
- 「出光興産の株価は割安?割高?」
出光興産は大企業、かつ配当利回りが高いので、特に高配当投資家に人気があります。
一方、出光興産の株価は2018年の高値からすでに半値以下に下落しています。今の株価は割安と考えてよいでしょうか?当サイト(ロイナビ)のアンケートでも株価分析希望が多かったので、調べてみました。
本記事では出光興産の業績や財務内容、株価の割安さなどから、今の株価は買い時なのか?について私の考えを紹介します。
本記事は、自分の銘柄調査の一環として行ったものです。私なりの投資判断が含まれていますが、投資を推奨するものではありません。
投資をする際は、最新の情報を調べたうえで、自己責任で投資判断をお願いします。
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私の代表的な6つの投資判断基準
投資判断基準は投資スタイルによって異なります。私の場合、業績好調な割安株(バリュー株)への投資が好きなので、以下の6つの観点を重視しています。
上記6つの観点で出光興産の株価は買い時なのか、私なりに検討してみました。
出光興産の現在の業績は良好だが、今後は原油価格次第
1つ目の判断基準は「業績は成長しているか?」です。
2007年以降の出光興産の長期業績(売上高・営業利益)は以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
- 売上高:右軸
- 営業利益:左軸(0からのスタートではないことに注意してください)
出光興産の業績は、原油価格が急落した2015~2016年に巨額の営業赤字に陥りました。
しかし、その後に原油相場が落ち着くと、出光興産の業績は急回復しました。さらに、2019年に昭和シェル石油と経営統合・完全子会社化したことにより、今後の売上増加・コスト削減が見込まれています。
米中貿易摩擦などの影響で景気が鈍化した2019年以降はやや減益となっています。しかし、依然として営業利益は高水準の見込みとなっています。
今後の懸念材料は、景気悪化に伴う業績低迷
原油価格は景気の悪化による需要減少や、中東地域の地政学リスクの高まりによる供給不安などに対して敏感に反応しやすいです。2015~2016年の業績からわかるように、出光興産の業績は原油価格の影響を受けやすく、不安定になりがちという特徴があります。
2020年は消費増税や新型肺炎の問題などで景気悪化の可能性があるといわれています。もし本格的な景気悪化に陥った場合、石油の需要減退により原油価格が低迷し、出光興産の業績も悪化する可能性があります。
もし出光興産に投資する場合は、今後の原油価格に注意が必要です。
出光興産の営業利益率は約4.1%で低い水準
2つ目の判断基準は、利益率の高さです。利益率は競争力の強さを表す目安であると考えており、利益率は高いほど良いです。
出光興産の2007年以降の営業利益率は以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
出光興産の営業利益率はリーマンショック後にやや上昇していますが、2019年3月期の営業利益率は約4.1%です(2020年3月期は2.7%に低下する見通し)。
日本株の場合、平均的な営業利益率は8%前後で、10%以上あれば良好といわれています(日本最大の企業、トヨタ自動車でも約8%です)。
出光興産の営業利益率4.1%は低めな水準であり、他の競合企業と比べても高くありません(たとえば、JXTGホールディングスの営業利益率は4.8%、コスモエネルギーホールディングスは3.4%)。
出光興産は国内大手の企業ですが、特別強い競争力を持っているわけではなさそうです。
出光興産のキャッシュフローは変動が激しい
3つ目の判断基準は、キャッシュフローの潤沢さです。キャッシュフローは現金の出入りを表す数値であり、事業の実態を反映する指標として重要です。
出光興産のキャッシュフローの推移は、以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
特に重要といわれる、営業キャッシュフローは変動が激しく、明確な増加傾向はみられません。企業の成長以上に原油相場の影響が大きいためと考えられます。
また、出光興産は投資キャッシュフロー(設備投資など)が大きい年が多く、フリーキャッシュフローがたびたびマイナスになっています。
※フリーキャッシュフローは、営業キャッシュフローから投資キャッシュフロー(絶対値)を引いたもの
つまり、出光興産は競争力を維持するために、多額の投資が必要な企業であり、自由に使えるお金は比較的少ないと考えられます。
長期の業績・財務状態を調べるのに便利な財務分析ツール3選
銘柄分析をするときに、決算短信や有価証券報告書を全部調べていくのは大変です。各社が提供している財務分析ツールを上手に使って、効率よく銘柄分析するとよいです。 中でも、私が主に使っているのは以下の3つです。- マネックス証券 の銘柄スカウター
- GMOクリック証券 の財務分析ツール
- 会社四季報CD-ROMのスクリーニング機能
出光興産の財務は健全
4つ目の判断基準は財務の健全さです。
貸借対照表(BS、バランスシート)をみると、企業の保有資産や負債などの内訳がわかります。売上高や利益などのデータに表れない、企業の強みや危険な兆候が貸借対照表に表れます。
売上高や利益も大事ですが、それ以上に貸借対照表のきれいさのほうが重要と私は考えています(同様に、キャッシュフローのきれいさも重要です)。
出光興産の貸借対照表は以下のようになっています(引用:GMOクリック証券の財務分析ツール)。
出光興産の自己資本比率は約29%で普通の水準
出光興産の自己資本比率をみると、約29%です。
自己資本比率の目安として、30%くらいで普通、40%以上あれば優良といわれます。自己資本比率が約29%という出光興産の財務は普通の水準です。
また、短期的な支払い能力の目安である流動比率(流動資産÷流動負債)をみると、約1倍となっています。
出光興産は借入金をうまく活用しつつ、その水準は適正なレベルに収まっています。出光興産の財務は健全とみてよさそうです。
出光興産の株価は割安~フェアバリューな水準
5つ目の判断基準は、株価の割安さです。
出光興産の株価チャートは以下のようになっています(引用:SBI証券のホームページ)。
出光興産の株価は景気の拡大期であった2017~2018年に最大で3倍近くなりました。
しかし、米中貿易摩擦が激化してから、出光興産の株価は下落基調となり、高値の半分以下に落ち込んでいます。今の出光興産の株価は割安とみてよいでしょうか?
ここでは、株価の割安さの指標として、以下の3つを使って検討してみました。
- PER(株価収益率)
- PBR(株価純資産倍率)
- 企業価値評価手法による理論株価
PERやPBRは多くの人が使っているので無視できない株価指標ですが、欠点もあります(PER・PBR・ROEの使い方と注意点についてはこちら)。
一方、私が最も重視しているのが、「企業価値評価手法による理論株価」です。
企業価値評価手法では事業性と資産性を総合評価するため、合理的に株価の割安度を測ることができます。
割安株投資をするなら、企業価値評価手法による理論株価がおすすめです(理論株価の考え方と計算方法についてはこちら)。
出光興産のPERは約8.0倍で割安な水準だが、過去のPERと比較すると平均的
最初に、出光興産のPERの推移を見ると、以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)
現在のPERは約8.0倍です。PERの平均値は15倍くらいが目安といわれますので、現在の出光興産のPERは割安な水準と見えます。
一方、過去の出光興産のPERをみると、10倍以下になっていることが多いです。出光興産のPERは全体的に低めになっており、出光興産の過去の予想PERと比較する場合、現在のPER=8.0倍は平均に近い水準です。
出光興産のPERは割安~フェアバリューという水準です。
出光興産のPBRは約0.63倍で、割安な水準
次に、出光興産のPBRの推移を見ると、以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)
出光興産のPBRは2018年に約1.5倍でしたが、その後は低下し続け、現在のPBRは約0.63倍です。
PBRは1倍が解散価値(事業を清算したときに残る、帳簿上の価値)といわれ、下値の目安とされています。
出光興産のPBRはやや割安な水準です。
出光興産の株価は理論株価(企業価値)に対して割安
割安度の指標として有名なPER、PBRは一面的な評価であり、企業の実態がわかりにくいという弱点があります。
そのため、私が株価の割安さを判断するときは、企業価値評価手法によって求めた理論株価を重視しています。
企業価値(理論株価)を計算する手法はいろいろありますので、自分の考え方に合った手法をとるとよいです。
私の場合は、GMOクリック証券 の財務分析ツールで使われている手法と基本的に同じ考え方であるため、前記ツールを参考値として使っています(GMOクリック証券の財務分析ツールの特徴と使い方についてはこちら)。
理論株価(適正株価)の計算式と使い方の注意点。おすすめは企業価値評価手法
GMOクリック証券の財務分析ツールによると、出光興産の理論株価は以下のようになっています。
出光興産は、近年の業績が良好なため、事業価値が高くなっています。一方、有形固定資産(土地や建物、設備など)や棚卸資産などが多いため、財産価値(資産の種類で重みづけした場合の保有資産価値)は少なめです。
事業価値と財産価値の合計から有利子負債を引くと、出光興産の理論株価は5893円となっています。実際の株価2636円(2020/3/3終値)は理論株価より55%も割安となっています。
理論株価は決算発表が出るごとに変わります。
最新の理論株価を調べるには⇒ GMOクリック証券
株主価値と時価総額の推移
さらに、株主価値と時価総額の推移についても見てみましょう。
株主価値(企業価値)は前記の理論株価に発行済み株式数をかけたものです。また、時価総額は株価に発行済み株式数をかけたものを表します。
したがって、下図は株主価値⇒理論株価、時価総額⇒株価と置き換えて見てください。
出光興産の株主価値と時価総額の推移は下図のようになっています(引用:GMOクリック証券の財務分析ツール)。
現在の出光興産の市場価値は、株主価値に対して大幅な割安になっています。
しかし、2017年4月~2018年3月は逆に大幅な割高となっており、変動が激しいことがわかります(おそらく、2015~2016年の大幅赤字の影響で、株主価値がマイナスになっていたと考えられます)。
今のところ、出光興産の業績は良好なので、株価は割安と考えられますが、今後の業績次第で逆に割高になってしまう可能性があります。
株価の割安さを理由として出光興産に投資するなら、業績の先行きに細心の注意が必要です。
割安株を探すのに便利なスクリーニングツール
企業価値評価手法による理論株価でスクリーニングできるツールは少ないです。その中で、私が主に使っているのは以下の2つです(財務分析ツールの特徴と使い分け方についてはこちら)。- GMOクリック証券 の財務分析ツール
- 会社四季報CD-ROMのスクリーニング機能
出光興産の配当利回りは高いが、株主優待はなし
6つ目の判断基準は株主還元(配当・株主優待)をする姿勢があることです。
配当や株主優待には賛否両論あり、無いほうが良いという人もいます。しかし、配当や株主優待がある銘柄は、市場がショックに見舞われたときの株価下落率が比較的小さいという良さがあります。
そのため、私は業績などを最優先としたうえで、株主還元姿勢がある銘柄はなおよいと考えています。
出光興産の配当・株主優待について、詳しく見ていきます。
出光興産の配当利回りは約6.1%で高い
出光興産の配当金利回りの推移は以下のようになっています(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
2018年以降に株価が大幅に下落した一方、配当金は増加しているため、配当利回りは約6.1%に達しています。
配当利回りは平均2%前後ですので、出光興産はかなりの高配当株です。
出光興産の配当金は長期的に増加している
さらに、出光興産の配当金の推移を見ると、以下のようになっています(公式ホームページのデータから作成)。
出光興産は2018年から急激に増配しており、3年間で配当金は約3倍になる予定です。
2019年の実績配当性向は約25%であり、まだ増配余地があります。
※配当性向:税引後純利益のうち、何%を配当金として支払ったかの指標
業績の大幅悪化が無い限り、高配当が期待できそうです。
出光興産の株主優待はない
残念ながら、出光興産に株主優待はありません。
株主優待を楽しみにしている人にとっては、この点はマイナスです。
出光興産と競合企業の比較について
出光興産の競合企業として、コスモエネH、JXTGHの業績と各種投資指標を比較してみました。
売上高、営業利益の比較
出光興産、コスモエネH、JXTGHの売上高、営業利益を比較した結果が以下です(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
売上については、昭和シェルとの統合を実現できた出光興産の増加率がやや大きいです。一方、利益についてみると、3社とも原油相場による変動が大きく、明確に増加傾向があるとはいえない状況です。
今期は3社ともやや減益という見通しになっていますが、その中でも出光興産は減少率がやや緩やかな予想となっています。3社の中では、出光興産の業績がやや良さそうです。
投資指標の比較
出光興産、コスモエネH、JXTGHの投資指標を比較した結果が以下です(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
PER・PBRでみると、3社とも割安に見えます(コスモエネHは純利益の大幅減でPERが異常値になっていますが、PBRでは割安)。
一方、ROEでみると、コスモスエネHが良好に見えますが、自己資本比率が16.5%なので、安定性が良くなさそうです。
資本効率性の高さで選ぶならコスモスエネH、安定感のよさで選ぶなら、出光興産・JXTGHがよさそうです。
直近決算の状況
出光興産の四半期業績の推移を見てみましょう(引用:マネックス証券の銘柄スカウター)。
前年同期比で約24.5%の営業減益となっています。営業利益の進捗率は約66%となっていて、あまりよくありません。
出光興産の今期の業績は悪化懸念が強く、厳しい状況が続いています。
【まとめ】出光興産の株価は買い時か?私の総合的な投資判断について
出光興産の投資判断について、下表にまとめました。各項目について、私なりの基準で◎、〇、△、× の4段階で評価してみました。
観点 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
業績の成長 | △ | 最近の業績は良好だが、景気変動に敏感な点に注意 |
利益率の高さ | △ | 営業利益率は約4.1%で低い水準 |
キャッシュフロー | △ | 営業キャッシュフローは変動が激しい |
財務の健全さ | 〇 | 自己資本比率が約29%で、普通の水準 |
株価の割安さ | 〇 | 割安~フェアバリュー |
配当、株主優待 | 〇 | 配当利回りは約6.1%で高い 株主優待はなし |
出光興産は国内大手の石油精製・販売会社です。同社の業績は、原油価格が安定した2017年以降、好調となっているうえ、昭和シェル石油との統合で更なる成長の期待があります。
また、出光興産は配当利回りが約6.1%もあります。大型・高配当株で長期投資したい方に適した銘柄です。
一方、出光興産の業績は原油相場に左右されやすい特徴があります。今後もし本格的な景気後退がやってきて原油需要が減退した場合、出光興産の業績とともに株価も下落する可能性があります。
一時的な株価下落は耐えて高配当狙いで長期保有する、または本格的な不況が来て株価が十分下がってから投資するのが良さそうと考えています。
銘柄選定の参考になれば幸いです。
出光興産の株の買い方
最後に、出光興産の株を少額から、安い手数料で買う方法について解説します。手数料は運用成績を確実に悪化させる要因ですので、できるだけ手数料が安い証券会社を利用しましょう。
主なネット証券の一覧
投資をするなら、対面型証券会社よりもネット証券が良いです。ネット証券は運営コストが安いので、対面型の証券会社より格段に手数料が安いです。
主なネット証券12社とおすすめの用途は以下のようになっています。
会社名 | おすすめの用途 | 当ブログの評価記事 |
---|---|---|
SBI証券 | 何でも | SBI証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
楽天証券 | 投資信託 (ポイント) | 楽天証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
マネックス証券 | 米国株 | マネックス証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
松井証券 | ロボアドバイザー (投信工房) | |
auカブコム証券 | 日本株 | |
GMOクリック証券 | 日本株 (財務分析ツール) | GMOクリック証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
SBIネオモバイル証券 | 日本株 (単元未満株) | SBIネオモバイル証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
ストリーム(株アプリ) | 日本株 (手数料) | ストリーム(STREAM)のメリット・デメリット、評判・口コミ |
LINE証券 | 日本株 (単元未満株) | LINE証券のメリット・デメリット、評判・口コミ |
PayPay証券 (旧:ワンタップバイ) | 米国株 | PayPay証券(旧:ワンタップバイ)のメリット・デメリット、評判・口コミ |
岡三オンライン | 日本株 | |
ライブスター証券 | 日本株 |
- SBIネオモバイル証券:1株から少額投資できて、手数料も格安
- LINE証券:操作性が良くて、はじめての投資でも使いやすい(1株から少額投資可能)
- ストリーム(STREAM):株式の取引手数料が無料(従来型の委託手数料について)
- SBI証券:最大手のネット証券でオールマイティーに便利
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日本株の通常の取引単位は100株(1単元)です。出光興産の株価は2636円(2020/3/3終値)ですので、通常は約27万円くらいの資金が無いと購入できません。大金を一度に投資すると、失敗したときのダメージが大きくなりますし、そもそも投資資金が豊富でないと買えないという問題があります。
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SBIネオモバイル証券は2019年4月に営業開始した新興ネット証券ですが、ネット証券最大手のSBI証券とCCC(TSUTAYAやTポイントの運営会社)の合弁会社なので、信頼感もあります(SBIネオモバイル証券のメリット・デメリットはこちら)。
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※LINE証券の手数料について、詳しくはこちら
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分析記事の対象銘柄選びの参考にさせていただきます(過去の株価分析記事はこちら)。
投票の仕方:
- 以下の銘柄の中で、株価分析を希望する銘柄に投票してください。選択肢にない銘柄をご希望であれば、自分で追加することも可能です。
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- 書き込む場合は、日本株の銘柄名のみを入力してください。もし、それ以外の不適切な内容が書き込まれた場合は削除することもありますので、ご了承願います。
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